第2 日本の大学と中国の機関との共同研究
まず安全保障貿易管理の見地から、日中の共同研究に関してどのような場合に問題が生じるのか検討する。
1 具体的に想定されるケース
(1) 日本の大学が中国の機関と行う共同研究について、安全保障貿易管理の見地から検討を加えるにつき、技術提供または輸出の具体例として、以下の通り、さまざまなケースが考えられる。
場所
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研究を行ない実験や検証を経て研究成果を得るまでの過程が日本国内ですべて行われる場合、中国ですべて行われる場合、両国で行われる場合、実験などの一部が第三国や公海上で行われる場合などが考えられる。
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人
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研究スタッフが中国から日本へ、また日本から中国へ、移動し滞在する場合が考えられる。
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用いる設備、機器、資材
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日本にある場合、中国にある場合、国境を越えて移動する場合が考えられる。 試供品、研究資材を中国に持っていく場合、確実に持って帰るとしても規制の対象である。「貨物」には手作りの携行品や国内で販売されている物品、無償の資機材も含まれる。
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研究成果
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広く論文等を通じて公表し公知とする場合、ノウハウとして秘匿する場合、特許出願など知的財産権の取得を行う場合が考えられる。
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(2)安全保障貿易管理の対象となる貨物および技術が、日本と中国の両国にとって輸出・輸入となるさまざまな場合がある。
技術提供または輸出の具体例
(ガイダンス改訂版20頁)
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実験装置の貸与
技術情報をFAXやUBSメモリ、CDを用いて提供
電話や電子メールでの提供
授業、会議、打ち合わせ
研究指導、技能訓練
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2 共同研究契約の注意事項(末尾に資料として安全保障貿易管理の観点から必要な条項を記載した契約書等の例を示す。)
(1)共同研究契約書
(ア)取引審査における審査基準に照らして、必要な情報を契約書もしくは別途確認書に記載しておくことが望ましい。とりわけ、共同研究の成果である技術を利用する中国の機関、自己実施する範囲が重要である。中国の大学や機関は巨大な軍産学複合体を形成しており、軍事技術と民間技術の相互交流、相互乗り入れは深化拡大している。これは軍需産業と研究所双方の合理化と効率化と並行して行われており、組織変更が非常に積極的に行われている。
成果技術またはその技術によって製造される貨物が国際的な平和および安全の維持を妨げるおそれのある用途に利用されないかどうか、成果技術が中国で適正に管理されるか、などにつき共同研究終了後もチェックが必要である。規制対象となっているノウハウや未公開の研究成果を許可なく第三者へ再提供してはならない旨の条項を置き、別途、その旨の誓約書を提出させるべきである。
(イ)取り決めが遵守されない場合の損害賠償義務を定める。この場合損害賠償義務を負う主体につき、相手方機関の法的な意味での主体を確認する必要がある。たとえば差し押さえ可能な財産を保有しているのか、法的な強制執行などが可能なのかなどである。
共同研究の中国側の当事者がどこなのか、契約の主体を明確にする必要がある。安全保障貿易管理の見地から言うとエンドユーザーの確定と透明性の問題である。輸出許可において、貨物または技術の「需要者」と「用途」を明らかにし判断しなければならない。中国の大学とは何か、研究機関とはいかなる存在かを把握しなければならない。
(ウ)共同研究は必ずしも日本国内ですべてが行われ完結するものばかりではなく、双方の設備を用いる場合、実証実験が中国で行われる場合など様々なケースが考えられる。したがって安全保障輸出管理については日本から中国への輸出のほか、中国から日本への輸出も生じうる。その場合日本の外為法等の法令だけでなく、中国の法令も遵守する必要がある。共同研究契約において法令遵守(コンプライアンス)の規定を盛り込むのであれば、日中双方の研究者が双方の法令につき遵守義務を負うように規定すべきである(末尾契約書第1条九)。
ただし中国の安全保障貿易管理法令の適用については、中国の機関の方が習熟しているべきであるので、過度に違反のリスクを日本側が負うことのないような手当てが必要である。この場合、日本の大学も中国側機関が日本の外為法等法令に不用意に違反してしまわないように助言等を行うべきであろう(第2条第4項)
(エ)安全保障貿易管理の法令上、政府の許可を必要とする共同研究については、許可取得を契約自体の効力発生条件とすべきであろう。また研究開始以前は、該非判定が許可不要であっても、のちに許可を要することになる場合は、法令改正の場合以外にも、思わぬ研究の副産物としてデユアルユースの技術が誕生する場合が想定できる。その場合には許可を取得するまでは、現状の研究活動を中止せざるを得ないので、一方からの中止申し入れを可能とすべきであろう(第2条)。
(オ)研究担当者については安全保障貿易管理の見地から許可取得を要する場合には、相手方は、当該研究者の参加自体を拒否できるとすべきであろう。許可取得すれば参加は可能であるが、その許可の範囲内でしか技術の提供ができず、共同研究の効率性に支障が出ると思われる(第4条)。研究協力者についても同様である(第5条)
中国人研究者が来日後このような事態に至った場合には、研究経費の分担にも影響が出るため双方が協議すべきである。中国人研究者に虚偽の申告があった場合、虚偽申告はなく日本側がいったん受け入れを表明していたのちに判明した場合など様々なケースがありうる。
(カ)自己実施の範囲が不明確になりがちである。中国の大学、研究所ともに企業の株主であったり、自ら企業活動を行っている場合がある。教授自身の個人的な企業も多数活動している。
第三者に対する実施許諾については外国に対する技術の提供として、外為法上の許可が必要となる場合がある(第16条)。この場合も許可を取得して許諾するのではなく、実施許諾の中止も視野に入れるべきである。この場合知的財産権の行使については、日本と中国のいずれの国の権利かによりいずれの国の法律が適用されるか定まるので日中の特許権等の規定につき理解をしておく必要がある。
(キ)持ち分の譲渡についても譲渡相手によって、また用途によって安全保障貿易管理上の許可が必要になりうるが、共有持分の相手方となるわけであり、そのような譲渡自体を禁止する旨の合意が望ましいと考える(第18条)。
ノウハウの実施許諾や譲渡についても同様の安全保障貿易管理上の問題が生じるから発明に準じた取り扱いをすべきである(第20条)。
(ク)研究成果の公表については省令で適用除外とされているが、倫理上の問題は生じうる。したがって、共同研究契約上は公表しないとする規定を置くことも考慮すべきである(第23条)。
安全保障貿易管理上の事項につき、一方に不実の告知などがあった場合には相手方に契約解除権を与え、共同研究から離脱することができることとし、あわせて相手方への損害賠償請求も可能とすべきである(第24条、第25条)。
(ケ)損害賠償請求まで想定すれば、準拠法を自国法とし、裁判管轄も日本としておくべきである(第26条、第27条)。また損害賠償義務を負う相手方である中国の大学や研究所は法律上いかなる性格を有するのかについても理解しておく必要がある。
なお、このような二国間にまたがる契約について準拠法の考え方は日中で次のとおりである。
中国では共同研究契約の準拠法は当事者の合意により定められる(中国契約法126条)。渉外的要素のある契約の場合、中国の国際私法の考え方では、準拠法を当事者が選択することを認めている(民法通則145条)。契約当事者が準拠法を指定しなかった場合には、「契約と最も密接な関係にある国の法律」を適用する(契約法126条)。
日本の国際私法でも契約当事者が準拠法を指定できる。「法律行為の成立および効力は当事者が当該法律行為の当時に選択した地の法による。」(法の適用に関する通則法7条)指定のない場合には最密接関係のある国の法律を適用する(同法8条)。「最も密接な関係」は当該契約の義務履行地、締結地、当事者の所在場所、対象となる権利や権益などを総合的に考慮して決められる。
中国との共同研究契約では、人員、設備、技術などがもっぱら日本側で提供される限り、日本国の法律を準拠法に指定しておくべきである。また日本のオリジナルの技術について中国国内でデータを収集し分析し、中国の風土や環境に適した技術を開発する場合のように、研究活動が中国でもっぱら行われる場合でも、日本法を準拠法としておくことが望ましい。
ただし国家社会が大きな利害や権益を有する状況に適用される公法もしくは公法的色彩の強い法令は当事者の合意によっても排除できない。外国為替、貿易管理、独占禁止法などが典型的な例である。
(コ)来日した中国人研究者が所属機関から与えられた任務として研究開発を行う場合など日本の特許法上職務発明となることが明らかな場合には、所属機関(具体的には大学内の知的財産権管理機構が事務を扱う)と契約を締結すべきである。この際に中国の大学等の知的財産権管理の実態についても知っておく必要がある。
(サ)なお外為法上の許可を取得した場合に許可を取得した範囲内の技術を提供するものでなければならない。
(シ)共同研究の最初から最後まで文書管理を厳格に行い、技術提供にかかる文書や電磁的記録を保存する必要がある。これは時系列に従って整理されている必要がある。その文書が後日、知らないうちに改ざんされたり書き換えられていたりしないように、DVDにして封入して公証人役場で公証人に確定日付をもらうという方法もある。このことにより、どの時点でいずれが保有していた知見や技術データなのか、どの時点で研究成果が誕生したのかが証拠上明らかになる。
(ス)成果については共同研究契約で、成果の帰属に関する一般的な取決めは、次のとおりである。
「双方の研究担当者の共同創作に係る研究成果物に対しては、それぞれの貢献度に応じた持分による共有とし、一方の研究担当者が、相手方の研究担当者の協力を得ず単独で創作した研究成果物に対しては、それぞれ単独の所有とする。
双方の貢献度に応じた持分は双方の確認により定める。相手方の研究担当者の協力を得ず単独で創作した研究成果物か否かについては事前に相手方の同意を要する。」
したがって、共同研究の結果、日本の大学または中国の大学単独の研究成果物と、双方の共有の研究成果物が生まれることになる。研究成果物が生まれた場所により、その移動に伴い、日中間での輸出入が生じる。
日本で行われた共同研究の成果は、通常は中国側機関に持ち帰り還元することが当初から予定されているから、輸出者が中国側機関となる対外技術取引であり外為法25条1項の適用を受ける。
(2)共同出願契約書
日本で行われた共同研究の成果を日本で出願する場合には問題ないが、中国で出願する場合には、中国の代理人に資料やデータを提供する必要がある場合が考えられる。とくに拒絶理由通知を受けた場合には、それを回避するために多くの資料を渡さざるを得ないことも想定できる。外為法関連の省令で適用除外とされているのは出願または登録に必要最小限の技術の提供である。
したがって、許可を取得する必要が生じるような形態の資料の提供を行わないよう、もしくはやむを得ない場合には共同出願人である相手方の了承を得て許可を取得すべきであろう(末尾の共同出願契約書第9条)。中国で完成した共同の発明については、秘密保持審査を経て初めて日本に出願できることになる。
(3)研究試料提供契約
試料提供契約(MTA)についても、安全保障貿易管理上の問題が生じうるので政府の許可を要する場合には契約の効力自体を許可の取得を条件とすべきであろう(末尾の研究試料提供契約書第2条)。また試料提供後に研究内容が政府の許可を得る必要があるにいたった場合には、研究の中止と試料の返還を請求できるようにすべきであろう。
受領機関には安全保障貿易管理の見地から使用目的を制限し(第3条)研究成果の公表についても同様の制限をかけるべきであろう(第5条)。また受領機関側の行為によっては、提供機関に契約解除権を与えておく必要があろう(第8条)。
(4)誓約書
研究者、研究協力者は共同研究の当事者である日中の機関に対して、安全保障貿易管理の見地からの違反行為の内容に誓約をさせるべきである。中国人のみに対して誓約をさせるのではなく、また日本の法令の遵守だけをさせるのではなく日中双方に平等な内容にするのも一つの方法であろう。片務的ではなく双務的な内容とする趣旨である。
3 適用除外
特許出願など工業所有権の出願又は登録を行うために、当該出願又は登録に必要な最小限の技術を提供する取引については、安全保障貿易管理の観点から特に支障がないと認められるため許可を要しないとされている(貿易関係貿易外取引等に関する省令第9条第2項第11号)。
公知の技術や基礎科学分野の研究は対象外である。公知の技術を教科書などに基づき教える場合は規制の対象外である。また将来的に公知とするための技術提供であれば許可は不要である。製品の開発を念頭に置いている場合は、規制の対象となる。
貿易関係貿易外取引等に関する省令(平成10年通商産業省令第8号。以下「貿易外省令」という。)第9条において、安全保障貿易管理の観点から特に支障が無いと認められるため許可を必要としない技術提供が規定されている。代表的なものとしては以下のようなものがある。
○ 公知の技術を提供する取引又は技術を公知とするために当該技術を提供する取引であって、以下のいずれかに該当するもの(第2項第9号)
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− 新聞、書籍、雑誌、カタログ、電気通信ネットワーク上のファイルなどにより、既に不特定多数の者に対して公開されている技術を提供する取引− 学会誌、公開特許情報、公開シンポジウムの議事録など不特定多数の者が入手可能な技術を提供する取引
− 工場の見学コース、講演会、展示会などにおいて不特定多数の者が入手又は聴講可能な技術を提供する取引
− ソースコードが公開されているプログラムを提供する取引
− 学会発表用の原稿又は展示会などでの配布資料の送付、雑誌への投稿など、当該技術を不特定多数の者が入手又は閲覧可能とすることを目的とする取引
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○ 基礎科学分野の研究活動において技術を提供する取引(同項第10号)
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ここでいう「基礎科学分野の研究活動」とは、「自然科学の分野における現象に関する原理の究明を主目的とした研究活動であって、理論的又は実験的方法により行うものであり、特定の製品の設計又は製造を目的としないもの」(役務通達)をいう。
研究が特定の製品への応用を目的としているケースもあり、この例外に該当しない場合がある。
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○ 工業所有権の出願又は登録を行うために、当該出願又は登録に必要な最小限の技術を提供する取引(同項第11号)
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○ 貨物の輸出に付随して提供される使用に係る技術であって必要最小限のものを当該貨物の買主、荷受人又は需要者に対して提供する取引(同項第12号)
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○ プログラムの提供に付随して提供される使用に係る技術であって、インストールや修理などのための必要最小限のものの取引(同項第13号)
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ただし、提供の結果、プログラムの機能、特性が当初提供したものよりも向上する修理などに係る技術は除かれる。
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○ コンピュータや通信関連貨物の設計、製造又は使用に係る市販のプログラムに関する取引(同項第14号)
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○ あらかじめ利用者を特定した上で外為法第25条第1項の許可を取得した者から技術の提供を受けた者が行う、利用者に対する対外取引(同項第4号)
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○ 以上のような取引(具体的には貿易外省令第9条第2項各号)に伴って行われる技術の持ち出し(第1項第1号)
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○ 外為法第25条第1項の許可を取得した者から技術の提供を受けた者が行う、対外取引に伴って行われる技術の持ち出し(同項第2号)など
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4 中国人留学生・研究者の受入れ
(1)居住者と非居住者の概念
居住者・非居住者の 定義は、外為法第6条において規定されている。
居住者(第5号)
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・本邦内に住所又は居所を有する自然人
・本邦内に主たる事務所を有する法人(非居住者の本邦内の支店等は、法律上代理権があると否とにかかわらず、その主たる事務所が外国にある場合においても居住者とみなす)
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非居住者(第6号)
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・居住者以外の自然人及び法人
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居住者、非居住者の区別が明白でない場合は、財務大臣の定めによるところによる(第2項)
居住性
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当該中国人留学生が非居住者である場合に、居住者から非居住者に対する技術提供に該当する。来日して6カ月未満は外為法上、「非居住者」である。
来日後6カ月経過して「居住者」となった留学生が帰国後、外国において技術を再提供することがあらかじめわかっている場合や、その可能性がある場合には規制の対象となる。提供者である教員があらかじめ許可を取得するか、留学生自身が再提供の前に許可を取得する。
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これらの居住者、非居住者の概念は、安全保障の観点からの技術移転規制が導入される以前の、外為法が国際収支の均衡、通貨の安定を主たる法益としていた時期から存在し、資本取引、役務取引、対外・対内直接投資等に係る規制において両者の間の取引が規制の対象となっていた。 具体的には、「居住性の判定基準」を昭和35年以降、大蔵省通達において規定し、現在は「外国為替令の解釈及び運用について」(財務省通達・蔵国第4672号昭和55年11月29日)において考え方を整理している。そこでは、主として国際収支の均衡、通貨の安定の観点から、国際的な考え方に準じたものになっている。
財務省通達によれば、自然人のうち本邦人は、勤務目的で出国する場合には直ちに、それ以外では出国後2年を経過すれば、非居住者として扱われる。また、外国人は勤務目的で入国すれば直ちに、その他の目的であっても入国して6ヶ月経過すれば居住者として扱われる。当該外国人が本邦での用務等を終えて帰国する場合には非居住者となる。
(2)共同研究に際しての受け入れ
日本国内で、日本と中国の研究者が共同研究する場合に中国人留学生・研究者の受入れをともなうことが一般的である。彼らの中国における帰属先と帰国後の帰属先につき確認する必要がある。その経歴、所属等については真実性に関して誓約書を提出させることが必要である。
当該中国人研究者が、過去および現在いずれの機関に属していたのか、また属しているのかが不明確な場合に、調べる手がかりは第一には労働契約もしくは任用契約であり、第二には档案である。労働契約については通常書面契約であり、労働契約法(2008年1月施行)によれば短期間の雇用でも期間、職務内容などが記載された書面による労働契約が必要とされる。
档案(ダンアン)はすべての者が学生のときから作成される人事ファイルで、就職後は使用者が管理している。その書かれている中身は本人でも知ることができないが、自分の档案がどこで保管されているかは知っており、その保管者は当該研究者の所属機関であると強く推定できる。労働契約法は、「使用者は労働契約を解除または終了する、15日以内に労働者の档案を処理しなければならない。」旨を規定している(50条)。
彼がもし中国において人材派遣機関に所属し、研究所を派遣先として働いていた場合には雇用関係は人材派遣機関との間に存在することになり档案はその機関に存在する。
(3)共同研究以外の場合の受け入れ
中国政府派遣研究員事業は、社団法人科学技術交流センター(JISTEC)が、昭和54年12月6日に締結された「文化交流の促進のための日本国政府と中華人民共和国政府との間の協定」の趣旨に沿って行っているもので、中国政府派遣研究員の研究能力の向上と受入研究機関等における学術の発展を図る目的で、日本政府が研究費を負担し、中国政府は往復旅費と滞在費を負担し、6カ月または1年の期間で、文部科学省所管の大学等研究機関が受入機関となっている。JISTECは文部科学省より業務を受託し、中国国家留学基金管理委員会へ申請された申請書に基づき、受入の事務手続きを行い、研究支援費を支給している。JISTECのHPより。http://www.csc-r.jp/outline/about.html
このように国費で招聘する場合には、JISTECの受入れ審査の段階で安全保障貿易管理の見地から審査をすべきと思われるが、それが行われないのであれば、受入機関に置いて行わなければならない。
(4)在留資格
中国人留学生の在留資格は「留学」であり、外国人研究者の場合には「教授」「研究」「教育」「研修」「文化活動」などがある。
教授
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本邦において行うことができる活動
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本邦の大学若しくはこれに準ずる機関又は高等専門学校において研究、研究の指導又は教育をする活動
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在留期間
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三年又は一年
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研究
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本邦において行うことができる活動
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本邦の公私の機関との契約に基づいて研究を行う業務に従事する活動(一の表の教授の項の下欄に掲げる活動を除く。)
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在留期間
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三年又は一年
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教育
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本邦において行うことができる活動
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本邦の小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、専修学校又は各種学校若しくは設備及び編制に関してこれに準ずる教育機関において語学教育その他の教育をする活動
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在留期間
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三年又は一年
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文化活動
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本邦において行うことができる活動
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収入を伴わない学術上若しくは芸術上の活動又は我が国特有の文化若しくは技芸について専門的な研究を行い若しくは専門家の指導を受けてこれを修得する活動(四の表の留学の項から研修の項までの下欄に掲げる活動を除く。)
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在留期間
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一年又は六月
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留学
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本邦において行うことができる活動
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本邦の大学若しくはこれに準ずる機関、専修学校の専門課程、外国において十二年の学校教育を修了した者に対して本邦の大学に入学するための教育を行う機関又は高等専門学校において教育を受ける活動
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在留期間
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二年三月、二年、一年三月又は一年
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(5)外国人登録
日本に90日以上滞在する外国人は、すべて外国人登録法により住んでいる地域を管轄する市役所等で登録を行わなければならない。
5 学内規定
ここでは整備しておくべき学内規程に挿入する条項につき示す。
(1)共同研究規定
(共同研究の実施基準)
本学において、共同研究を実施する場合は、次の各号に掲げる基準を満たしていることを確認し、行うものとする。
一 共同研究を実施することが、その研究内容、研究目的、共同研究の相手方、成果の利用用途、成果の需要先等からみて外為法上の許可を要する技術提供等に該当しないかどうかを本学の安全輸出管理規定に基づき審査し、許可が不要であるか、許可を要するとしても容易に許可を取得できる場合であること。
二 (以下略)
(2)中国政府派遣研究員受入れ規定
下記の条項が必要と考えられる。
(中国政府派遣研究員の要件)
本学が中国政府派遣研究員として受け入れることができる者は、次に掲げるすべての要件を満たしているものとする。
一 教職又は研究経験がおおむね○○年以上であること。
二 日本語能力が相当程度に達していると認められること。
三 本学の受入れ担当教授の指導及び助言のもとに研究に従事すること。
四 中国政府派遣研究員への教授・指導が研究内容、中国における帰属先、帰国後の帰属先等に照らして、外為法上の許可が必要な技術提供とならないこと。
(受入れ手続き)
受入れの可否について安全保障貿易管理の見地からJISTECにおいて審査が行われた場合には、その結果通知を本学が受領することとし、審査が行われなかった場合には、本学の本学の安全輸出管理規定に基づいて、研究内容、中国における帰属先、帰国後の帰属先等に照らして、外為法上の許可が必要な技術提供とならないことを審査することとする。
(規程等の遵守)
中国政府派遣研究員は、外為法、本学の安全輸出管理規定等の諸規程、受入れ担当教員の指示を遵守しなければならない。
(3)外国人学生および研究生に関する規程
入学許可の条件に安全保障貿易管理の見地からの条件を加え、また研究科長に一定の権限を与える必要がある。
(入学許可条件)
学生・研究生として入学することができる者は以下のとおりとする。
(1)経歴、本国における所属、本学で研究しようとするテーマ、内容、目的、本学での修学・研究を終えたのちの帰属先等から判断して、外為法に規定する安全保障貿易管理の見地からみて本学が技術の提供に際して我国政府の許可が不要な者
(研究科長の調査および監督権限)
研究科長は、所属する外国人学生および外国人研究生に対して、外為法に規定する安全保障貿易管理の見地から本学における技術の提供が我国政府の許可を要するか否かの判断に必要な調査を行うことができる。
外国人学生・外国人研究生が前項の調査に協力しない場合には、研究科長は教育会議に、当該学生・研究生の退学の決議の進言し、退学を命ずることがある。
(4)外国人受託研修員受入れ実施要項
受託研修員についても受入れ許可の判断に際して考慮が必要である。
(受入れ資格)
本学が受託研修員として受け入れる外国人研修員は外為法上の安全保障貿易管理に照らして、本学における技術の提供に際して我国政府の許可が不要な者とする。
学長は、独立行政法人国際協力機構その他の受入れ依頼機関と協議のうえ、研修を希望する者および派遣元政府等から前項の判断に必要な情報を収集し、受け入れの可否を判断するものとする。
(5)外国人教師及び外国人研究員就業規則
(労働義務及び誠実義務等)
外国人教師及び外国人研究員は、学長、研究科長その他の職務上の上司の指示命令と本学諸規程を守り、誠実かつ公正に職務を遂行しなければならない。
外国人教師及び外国人研究員は、本学の安全保障貿易管理規定を遵守し、外為法上、政府の許可が必要な外国への技術の提供等の行為に関与する場合には、本学担当部局にただちに申告しなければならず、本学担当部局その他上司から、安全保障貿易管理に関して調査の申し入れを受けた場合には協力しなければならない。
(6)職員就業規則
(懲戒の事由)
一 外為法上、政府の許可が必要な外国への技術の提供等の行為に関与する場合に本学の安全保障貿易管理規定に従った申告または情報提供を行わず、もしくは安全保障貿易管理担当部局による調査に協力せず、虚偽の申告・不実の告知を行うこと。
(7)安全保障貿易管理規定
(ア) 外国との共同研究も「外国への技術・輸出を行う場合」に該当することを念のために規定しておくことが望ましい。
(定義規定)
「提供・輸出」とは、技術の提供及び貨物の輸出(輸出を前提とする国内取引を含む)をいい、対象となる技術・貨物が本学における外国機関との共同研究の結果、得られた技術または貨物で当該機関との共有になるもの、もしくはいずれかの単独所有になるものを含む。
(イ) 「安全保障輸出管理規程」という名称で、日本国内から外国への技術貨物等の輸出のみを管理対象とする例が多いが、日本の外為法だけではなく、合衆国の法令などの域外適用(米国製品の再輸出規制など)についても管理対象とすべきである。中国国内での共同研究の場合に、中国の貿易法令違反となるケースも考えられる。
(本規定の準用)
本規定は、本学が保有する技術または貨物の外国から日本への輸入に関して、当該外国の安全保障貿易管理法令上の規制がある場合に準用する。
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