尾近法律事務所 本文へジャンプ
中国ニュース

第3 中国の安全保障貿易管理制度

1 中国の国際的安全保障貿易管理体制への参加状況

ワッセナーアレンジメント(瓦森納安排)に加盟していない(2010年2月時点)。http://www.wassenaar.org/participants/index.html

ワッセナーアレンジメントで規制対象としている通常兵器(常規武器)関連のデュアルユース(両用)品目を規制対象としていない。

しかしながら、中国外交部によれば、2004年4月から2008年11月の間に5回の会議を行い通常兵器および両用品の輸出管理に関して意見交換を行った。また2009年7月24日に「中国の軍事と貿易(軍貿)に関する政策および軍事品輸出管理制度」と題する政策を発表し、通常兵器の輸出管理を行なうことを表明した。

http://www.fmprc.gov.cn/chn/pds/wjb/zzjg/jks/zclc/cgjk/t320981.htm

NSG(原子力供給国会合)には参加している。http://www.nuclearsuppliersgroup.org/Leng/03-member.htm

NSGへの加盟に伴い2007年1月26日、「核両用品及び関連技術輸出規制条例」が改正され、NSGの輸出管理ガイドラインが反映されたキャッチオール規制が行われるようになった。また2006年11月19日、「核輸出規制条例」が改正された。

AG(オーストラリア・グループ)には加盟していない。

http://www.australiagroup.net/en/participants.html

ただし、2006年7月にAGにおける合意事項を反映した「生物両用品及び関連設備・技術輸出規制品目録」を公布している。

中国は19922月に文書でMTCR遵守の意向を米国に表明している。20035月にはMTCR参加の意志を表明した文書をMTCR議長宛に送り、20042月には、MTCRと中国の交渉が始まった。http://www.mtcr.info/english/partners.html

ただし2002年に「ミサイル関連品目及び技術輸出規制条例」を制定しており、キャッチオール規制が盛り込まれている。

 

2 中国が加盟している安全保障関連の条約

中国は以下の通り「核兵器拡散防止条約」「生物兵器禁止条約」「化学兵器禁止条約」などに加入している。

中国が加入している軍備抑制、軍縮と拡散防止条約

核の分野

「中国での保障実施に関する中華人民共和国と国際原子力機関の協定」(19889月調印、19899月発効)

「核材料実物防護条約」(19892月加入)

「海床海底およびその下層土への核兵器とその他の大規模殺傷兵器の配置禁止条約」(19912月加入)

「核不拡散条約(NPT)」(19923月加入)

「核安全条約」(1994年調印、19964月批准)

「包括的核実験禁止条約」(CCTBT)(19969月調印)

「中国での保障実施に関する中華人民共和国と国際原子力機関の協定付属議定書」(199812月調印、20023月発効)

化学の分野

「化学兵器の開発、生産、貯蔵、使用を禁止し、この種の兵器を廃棄することに関する条約」(19931月調印、19974月批准書寄託)

生物の分野

「窒息性ガス、毒性ガス又はこれらに類するガス及び細菌学的手段の戦争における使用の禁止に関する議定書」

「細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の開発、生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄に関する条約」(198411月加入)

通常兵器の分野

「過度に傷害を与え又は無差別に効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器の使用の禁止又は制限に関する条約」および付属する第123号議定書(19819月調印、19824月批准書寄託 20036月条約第一条改正案批准、同年8月批准書寄託)

「過度に傷害を与え又は無差別に効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器の使用の禁止又は制限に関する条約」に付属する「地雷、ブービートラップおよび他の装置の使用の禁止又は制限に関する改正議定書(改正された第二号議定書)(199811月批准書寄託)

「過度に傷害を与え又は無差別に効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器の使用の禁止又は制限に関する条約」に付属する「失明をもたらすレーザー兵器に関する議定書(第四号議定書)(199811月批准書寄託)

「国連の組織的な国際犯罪取り締まり条約」に付属する「銃器とその部品・弾薬の不法製造・販売取り締まりに関する補充議定書」(200212月調印)

3 中国国内の管理制度

(1)中国の安全保障貿易管理に関する法令は以下のものがある。

対外貿易法

1994 5 12 日成立、2004 4 6 日改正)

3   貨物の輸出入及び技術の輸出入

14 条  国は貨物及び技術を自由に輸出入することを許可する。ただし、法律、行政法規に別に規定のある場合は除外される。

15  国務院対外貿易主管部門は輸出入状況監視の必要により、自由に輸出入する一部の貨物に対し、輸出入自動許可を与え、そのリストを公表することができる。

自動許可を取る輸出入貨物につき、荷受人や荷送人が税関の通関手続きを行う前に自動許可を申請する場合、国務院対外貿易主管部門又はその他の委託を受けた機関は許可することができる、自動許可の手続きを行っていない場合、税関は通関を許可しない。

輸出入が自由輸出入の技術に属する場合、国務院対外貿易主管部門又はその他の委託を受けた機関は契約の届け出記録を行う。

16 次の状況にひとつでも該当する貨物、技術につき、国はその輸入又は輸出を制限或いは禁止することができる。

1)国家安全、社会公共利益或いは公共モラルのために、輸入又は輸出を制限或いは禁止する必要がある場合。

(中略)

10)法律、行政法規の規定に基づき、その他の輸入又は輸出を制限或いは禁止する必要がある場合。

11)我が国が締結又は加盟する国際条約、協定の規定に基づき、その他の輸入又は輸出を制限或いは禁止する必要がある場合。


17  国は核分裂、核融合物質又はこの種の物質と関連する誘導体の貨物、技術の輸出入、及び武器、弾薬又はその他の軍用物資と関係のある輸出入に対し、国家安全を維持するためにはあらゆる必要な措置を講じることができる。

戦争時又は国際平和と安全を擁護するためには、国家は貨物、技術輸出入において、あらゆる必要な措置を講じることができる。


18  国務院対外貿易主管部門は国務院関係部門と共同して、本法第16 条、第17条の規定に従い、輸出入制限又は禁止する貨物、技術目録を制定し、調整し、公布する。

或いは国務院対外貿易主管部門は国務院関係部門と共同して、国務院の承認を得た上で、本法第16 条、第17 条に定められる範囲内において、前項規定の目録以外の特定貨物、技術の輸入又は輸出を臨時に制限、又は禁止することを決定することができる。

核の分野

「中華人民共和国核輸出管制条例」(19979月公布、20016月改正)

「中華人民共和国核両用品と関係技術輸出管制条例」(19986月公布、2007126日改訂)

「核製品の転送と国境通過運送の審査・認可管理規則(試行)」

20001月公布)

生物の分野

「中華人民共和国生物両用品および関係設備・技術輸出管制条例」(200210月公布)

化学の分野

「中華人民共和国監視化学品管理条例」(199512月公布)

「各種監視化学品リスト」(19965月公布、19986月補充)

「『中華人民共和国監視化学品管理条例』実施細則」(19973月公布)

「第3種監視化学品に入れられた新規増加品種リスト」(19986月公布)

「化学品および関係設備・技術輸出管制規則」(200210月公布)

ミサイルの分野

 「中華人民共和国ミサイルおよび関係種目・技術輸出管制条例」(20028月公布)

軍用品輸出の分野

「中華人民共和国軍用品輸出管理条例」(199710月公布、200210月改正、200211月「軍用品輸出管理リスト」公布)

機微(敏感)種目

「機微種目と技術輸出・経営・登録管理規則」(200211月公布)

「機微種目と技術輸出許可証暫定管理規則」(200312月公布)

「機微種目と技術輸出許可証管理リスト」(200312月公布)


(2)制度の歴史

中国は2005年9月に不拡散白書(注1)を発表し、大量破壊兵器の禁止・廃棄を主張している。国連安保理決議(UNSCR)第1540号に積極的にかかわっている。

2009年7月27日にも中国外交部は「中国の不拡散政策と施作」と題する声明を発表し、中国政府が大量破壊兵器の拡散防止等に反対し、輸出管理体制を確立していることをアピールした。

2007年1月、核両用品輸出管理に関して規則を改正した。中国の輸出者が核兵器の最終用途向けに当該輸出貨物を利用される危険を知っている場合に規制を行うキャッチオール規制を開始した。中国の税関は、貨物が規制対象の核両用品であると判断した場合には商務部から輸出許可を得るよう輸出者に要求できる。

(3)担当政府部門

国務院の商務部機電科技産業司が輸出管理を行う(http://exportcontrol.mofcom.gov.cn/)。機微品目(敏感物項)および技術の輸出管理については主要な省と直轄市にも出先機関を置いている。

2009年、5月13日、商務部は、「両用品目と技術輸出入通用許可管理弁法」を発布し、7月1日より実施した。同年12月31日、商務部と税関総署は「両用品目と技術輸出入許可証管理目録」を公布した。http://exportcontrol.mofcom.gov.cn/aarticle/t/z/200912/20091206715822.html

2008年12月31日改訂、2009年1月1日施行の目録については、「輸出管理ガイダンス 海外輸出管理法制度 中国版(2009年7月発刊)」に翻訳が収録されている。

(4)法執行

2006年以降、中国商務部は、輸出管理に違反した事例を公表した。一つは上海税関が摘発した両用品目及び技術輸出許可証を得なければならない貨物(シアン化カリウム)の輸出につき虚偽の申告を行ったというもので罰金に処せられたという事例である(http://exportcontrol.mofcom.gov.cn/aarticle/ar/200610/20061003349374.html)。

また吉林省の企業が監督規制(監控)化学品管理条例に違反して許可を得ずにシアン化ナトリウムを輸出した事例では貨物の没収と行政罰が科された。

さらに2008年には、特定(有関)化学品及び関連設備・技術輸出規制規則の規定に違反して機微な貨物を輸出したとして行政罰を与えた  (http://exportcontrol.mofcom.gov.cn/aarticle/ar/200803/20080305439549.html)。これらの摘発事例の公表は、中国政府の法執行の透明性の努力を示すものである(「中国の輸出違反事例に関する最近の報告」 CISTEC Journal2008.11」)。

(5)関連政府部門

商務部以外にも、核不拡散等に関連する政府機関がある。たとえば外交部の中に「軍控司」という軍縮に関する部局がある。http://www.fmprc.gov.cn/chn/pds/wjb/zzjg/jks/



▲中国ニュース一覧へ戻る




Copyright(C)2010,Ochika Law Office. All Rights Reserved.