第4 技術輸出入管理条例
1 中国において日中共同研究を行う場合に、日本からの技術輸入あるいは中国からの技術輸出に該当する場合があり、中国の技術輸出入管理条例、対外貿易法などの規制につき注意する必要がある。
技術輸出入管理条例(2001年12月)(旧条例は1985年の技術導入管理条例)によれば以下のとおりである。
技術を禁止類、制限類、自由類に分け、自由類については契約の登録が要求されるがそれは効力の発生要件ではない。輸出入自由技術についてはオンライン登録制になっている。
制限類の技術については許可証が必要である。禁止類の技術は輸出できない。
審査期間については自由技術で3日間、制限技術で30日以内とされている。
輸入が禁止又は制限される技術は、「対外貿易法」及び「技術輸出入管理条例」に基づき制定された輸入禁止輸入制限技術目録に列挙されている。
輸入制限技術は、政府主管部門の許可を受け、技術輸入許可証を取得しなければ輸入することができない。技術輸入契約は、技術輸入許可証の発効日をもって効力を生じる。
輸入自由技術については、技術輸入契約を登録しなければならない。登録がなされると、技術輸入契約登録証が発行される。これは技術輸入契約の効力発生要件ではない。登録証がないと、技術使用料の海外送金ができない。
2 契約法と技術輸出入管理条例はいずれも技術譲渡者・ライセンサーの保証責任を規定している。
(1)譲渡人が技術の適法な所有者であり、譲渡や使用許諾をする権利を有すること(管理条例24条1項)。
(2)技術的目標達成に関する責任
管理条例25条 提供した技術が完全で誤りなく有効であり、約定された技術目標を達成することができることを保証しなければならない。
契約法第349条も同旨である。
(3)権利侵害に対する保証責任
技術受領者が契約の約定に従い技術提供者の提供した技術を使用し、第三者から権利侵害であると訴えられた場合は、技術受領者は直ちに技術提供者に通知しなければならない。技術提供者は通知を受け取った後、技術受領者が障害を排除するのに協力しなければならない(技術輸出入管理条例第24条第2項)。
技術受領者が契約の約定に従い技術提供者の提供した技術を使用したことにより、他人の合法的権益を侵害した場合は、技術提供者が責任を負う(同条3項)。
技術輸出入管理条例では、単に技術譲渡人が責任を負うと規定されており、当事者間の特約による免責について規定していない。技術輸出入管理条例上の保証義務を契約上免責できないというのが政府の解釈である。
契約法第353条では、当事者間で特約を結んで免責とすることができるが、契約法第353条は「技術輸出入契約または特許、特許出願契約につき法律、行政法規に別段の規定がある場合、その規定に従う。」と規定しているので条例(国務院の行政法規である)が契約法に優先すると考えられる。
ただし、「ライセンシーが契約の規定に従ってライセンサー提供の技術を使用し、約定した範囲を超えて技術を使用していないこと」を条件とする(中華人民共和国技術輸出入管理条例問答(国務院法制弁公室))。
ライセンサーによる技術の提供と第三者の権利の侵害との間に因果関係があることが必要である。
ライセンス契約の中でライセンシーが当該技術を実施できる地理的範囲を限定しておき、その範囲外でライセンシーが実施品を製造販売した場合にはもはや当該地域での第三者からのクレームにつきライセンサーは責任を負わない。
賠償責任の範囲を限定したり、上限を定めることは可能である。
(4)大学が技術輸出入管理条例上の義務を直接負わない方法
ふたつの方法が考えられる。
第1は日本国内で大学の関連会社を設立し、そこに特許を受ける権利を譲渡し、企業と共同で中国へ特許出願したり、当該関連会社と中国の大学や機関との中国における共同特許出願を行う方法である。日本での関連会社による迂回である。
第2の方法は、中国国内に法人を設立し、それに対して特許を受ける権利を譲渡し、当該中国法人と日本企業との共同特許出願あるいは、当該中国法人と中国の大学・機関との共同特許出願を行う方法である。日本の大学から中国関連法人への特許を受ける権利の譲渡の際には技術輸出(中国法人から見れば輸入)となり、大学は技術輸出入管理条例上の保証責任を中国関連法人に負うことになるが、現実に第三者から権利・権益を侵害されたとして追及を受けるのは中国関連法人であり、かつ日本の大学は当該中国関連法人への出資者として有限責任しか負わない。ただし、一人会社につき出資者の責任の可能性を新会社法は規定しているため、中国関連法人は複数の出資者により設立すべきである。
(5)技術契約の無効
契約法329条は、違法に技術を独占し、技術の進歩を妨げ、または第三者の技術成果を侵害する技術契約は無効とする。
「違法に技術を独占し技術の進歩を妨害する」についての最高人民法院の司法解釈(2004年)10条
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@当事者の一方が契約の目的技術を基礎にして新しい研究開発を行うことを制限し、または改良された技術の使用を制限し、または改良技術の交換条件が平等でないこと。当事者の一方に自ら開発した技術を無償で相手方に提供し、互恵原則によらずに相手側に譲渡し、改良技術の知的財産権を無償で独占又は共有させるよう要求することを含む。
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A当事者の一方がその他の出所から技術提供者と類似する技術またはそれと競争関係にある技術の取得を制限すること
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B当事者の一方が市場の需要に基づき、合理的な方法により契約の目的技術を十分に実施することを妨害すること。これは受入れ者が契約の目的技術を実施して生産する製品または提供したサービスの数量、種類、価格、販売ルートおよび輸出市場を著しく不合理に制限することを含む。
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C技術の受入れ者に技術の実施に必要でない付帯条件を受け入れるよう求めること。不要な技術、原材料、製品、設備、サービスの購入、不要な人員派遣を含む。
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D技術の受け入れ者の原材料、製品、購入ルートおよび出所を不合理に制限すること
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E技術の受け入れ者が契約の目的技術の知的財産権の有効性に異議を申し立てることを禁止し、異議申し立てに条件を付すること。
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対外貿易管理法30条によれば、上記と同旨の、技術受入れ者の被害を防止する観点から、国務院対外貿易主管部門が必要措置を講じられると規定している。
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