第6 中国の特許制度について
1 秘密保持審査
(1)特許法の第三次改正前には、中国で生まれた発明で中国人または中国の機関が行った特許出願について、中国を第一国として出願すべきとする規定があったが、第三次特許法改正ではこの制約はなくなり、そのかわりに、中国で完成された発明である限り、外国人、外国企業を含めあらゆる出願人は外国に出願する場合に秘密保持審査を受けなければならなくなった。
2009年10月1日施行の第三次改正後の特許法の第20条はつぎのとおり規定している。ジェトロのHPより。http://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/ip/law/pdf/regulation/20091001.pdf
「 いかなる部門又は個人が国内で完成した発明又は実用新案について、外国で特許を出願する場合、まず国務院専利行政部門に秘密保持審査を受けなければならない。秘密保持の手順及び期限等は国務院の規定に準拠する。
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中国の部門又は個人は、中華人民共和国が締結した関連の国際条約に基づいて特許の国際出願を行うことができる。
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出願者が特許の国際出願を行う場合、前款の規定を遵守しなければならない。
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(第三款略)
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本条第一款の規定に違反して外国で特許を出願した発明又は実用新案について、中国で特許を出願した場合は特許権を付与しない。」
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特許法実施細則第8条、第9条は次の通り規定している。
第8条「特許法第20条に言う中国において完成された発明又は実用新案とは、技術方案の実質的な内容が中国国内で完成された発明または実用新案を言う。
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いかなる単位又は個人が中国において完成した発明又は実用新案を持って外国に特許を出願する場合、下記に挙げる方式の何れか一つによって国務院特許行政部門に機密保持の審査を請求しなければならない。
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(1) 直接に外国に特許を出願する或いは関連する外国機構に特許の国際出願を提出する場合、事前に国務院特許行政部門へ請求を申し立て、かつその技術方案について詳しく説明しなければならない。
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(2) 国務院特許行政部門に特許を出願した後外国に特許を出願する或いは関連する外国機構に特許の国際出願を提出する場合、外国に特許を出願する或いは関連する外国機構に特許の国際出願を提出する前に国務院特許行政部門に請求を申し立てなければならない。
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国務院特許行政部門に特許の国際出願を提出する場合、同時に機密保持審査請求を提出したとみなされる。
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第9条 国務院特許行政部門は、本細則第8条に基づいて提出された請求を受け取った後、審査を経て当該発明又は実用新案が国家の安全又は重大利益に係わる可能性があり機密保持の必要があると認めた場合、適時に出願人に機密保持審査通知を発行しなければならない。出願人は、その請求提出日から4ヵ月以内に機密保持審査通知を受け取っていない場合、当該発明又は実用新案を持って外国に特許の出願或いは関連する外国機構に特許の国際出願を提出することができる。
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国務院特許行政部門は前項の規定により機密保持審査を行う場合、機密保持の必要性があるかについて適時に決定を下したうえ、出願人に通知しなければならない。出願人は、その請求提出日から6ヵ月以内に機密保持必要の決定を受け取っていない場合、当該発明又は実用新案を持って外国に特許の出願或いは関連する外国機構に特許の国際出願を提出することができる。」
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秘密保持審査を受け、秘密保持をすべきとされた特許については、特許法実施細則第55条が次の通り規定している。
「機密保持特許出願は審査を経て拒絶理由が見つからなかった場合、国務院特許行政部門は機密保持特許権の付与決定を行い、機密保持特許証書を発行し、機密保持特許権の関連事項について登記しなければならない。」
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(2)特許法第71条では次の通り規定している。
「 本法第20条の規定に違反して外国に特許を出願し、国家秘密を漏洩した場合、所在部門又は上級主管機関が行政処分を行う。犯罪を構成する場合、法により刑事責任を追及する。」
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ここでいう犯罪を構成する場合として、国家秘密保護法(中華人民共和国保守国家秘密法)がある。http://www.gov.cn/banshi/2005-08/21/content_25096.htm#
国家秘密の中には、「国防建設と武装力活動」(第8条第1款(2))、「科学技術」(同(5))などの秘密事項が含まれている。国家秘密には三種類の等級(密級)があり、最重要の国家秘密を「絶密」とし重要な国家秘密を「機密」とし一般的な国家秘密を「秘密」としている(第9条)。国防方面の国家秘密とその秘密等級(密級)の具体的範囲は中央軍事委員会により定められる(第10条第2款)。
同法は1988年9月5日に公布されたが、法改正の作業が行われており2009年6月22日、第11回全人代常務委員会で修正法案が審議された。
同法違反は故意犯、過失犯ともに刑法の規定により刑事責任を追及される。刑法第111条によれば、外国の機構、組織、人員のために国家秘密または情報を窃取し、偵察し(刺探)、買収し、違法に提供した者は5年以上10年以下の有期刑に処し、情状が特に悪い場合には10年以上の有期刑もしくは無期刑に処する。
特許法実施細則第7条はつぎのように規定している。
特許出願が国防利益に関わり、機密保持の必要がある場合は、国防特許機関が受理したうえ審査を行うものとする。国務院特許行政部門が受理した、国防利益に関わり、機密保持の必要がある特許出願は、適時に国防特許機関に移行して審査を行わなければならない。国防特許機関の審査を経て拒絶理由が見つからなかった場合、国務院特許行政部門より国防特許権の付与決定を行う。
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国務院特許行政部門は、その受理した発明或いは実用新案の特許出願が国防利益以外の国家安全又は重大利益に関わり、機密保持の必要があると考える場合、適時に機密保持特許出願として取り扱う決定を下し、出願人に通知しなければならない。機密保持特許出願の審査、再審及び機密保持特許権の無効宣告にかかわる特別手続きについては、国務院特許行政部門が規定する。
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ジェトロHPよりhttp://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/ip/law/pdf/admin/20100201.pdf
また国防特許条例が2004年11月施行から施行されている。北京大学の法律サイトより。http://vip.chinalawinfo.com/newlaw2002/slc/slc.asp?db=chl&gid=55510
一方、1995年1月6日、国家科学技術委員会、国家保密局が「科学技術保護規定」を公布した。JETRO HPより。
http://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/ip/law/pdf/section/19950106.pdf
その中で、国家科学技術秘密の範囲と等級について規定されている。
第7 条 国の安全及び利益に係わり、いったん漏洩すると、次の結果の一つを招くおそれのある科学技術は、国家科学技術秘密範囲としなければならない。
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(1)国の防衛及び治安能力を弱めるもの。
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(2)わが国の技術の国際上における先進度に影響をきたすもの。
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(3)わが国の技術の独自性を喪失するもの。
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(4)技術の国際的競争力に影響をきたすもの。
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(5)国の名誉、権益及び対外関係に危害を及ぼすもの。
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第8 条 国家科学技術秘密の等級
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(1)極秘等級
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1.国際的に先端的で、かつ国防建設又は経済建設に特別重大な影響をもたらすもの。
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2.ハイテクノロジーの領域において突出しているもの。
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3.全局面において国家の防衛及び治安に実力を反映させることができるもの。
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(2)機密等級
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1.国際的な先進水準に達し、かつ軍事的用途をもち又は経済建設に重要な影響をもたらすもの。
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2.局部的に国家の防衛及び治安に実力を反映することができるもの。
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3.わが国独自の、かつ自然条件的な要因の制約を受けない民族の特色ある精華を反映でき、かつ社会的公益の顕著な伝統工芸技術であるもの。
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(3)秘密等級
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1.国際的な先進水準に達し、かつ国外の主要な技術と比べて優勢であり、社会的公益又は経済的公益が比較的大きいもの。
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2.わが国独自の、一定の自然条件的な要因の制約を受け、かつ社会的公益又は経済的公益が非常に大きい伝統工芸技術であるもの。
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第9 条 次の情状の一つ該当する場合は、国家科学技術秘密範囲としない。
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(1)国外においてすでに公開されたもの。
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(2)国際上において競争力がなく、かつ国家の防衛及び治安能力に係わらないもの。
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(3)純粋な基礎理論研究成果。
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(4)国内においてすでに流行している、又は当地の大衆が基本的に身につけた伝統工芸技術。
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(5)主に当地の気候、資源などの自然条件的な要因の制約を受け、かつその生産条件を模倣しえない伝統工芸技術。
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第10 条 国家科学技術秘密とする民間科学技術は、原則として極秘等級にしない。
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確実に極秘等級とする必要がある場合は、本規定第8 条の極秘等級に関する規定に適合しなければならず、かつ国家科学技術委員会に報告し認可を受けなけらばならない。
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なお科学技術成果の製品化の促進法(1996年)第16条は次の通り規定している。
「国家の研究開発機関、高等学院および国有企業が外国企業・組織、または個人と連携して科学技術成果を製品化するにあたり、科学技術成果の価値評価を行ない、国家秘密にかかる場合、あらかじめ審査認可を要する。」
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また特許法上、国の安全利益に関わり秘密保持の必要がある場合には関連規定に基づき処理すると規定されている(特許法第4条)。
2 発明者の認定
共同研究で共有特許が生まれた場合、持分を決定しなければならない。
日本では共同発明の発明者の認定において、発明を「着想の提供」と「着想の具体化」に分け、提供した着想が新しい場合、その新着想の提供者を発明者とし、新着想の具体化を行った者が、当業者にとって自明の程度を超えている場合、その者も発明者である。
中国では、発明者の定義は、発明創造の実質的特徴に対して創造的な貢献をした者である。発明創造を完成させる過程において、単にその業務の組織化に責任を負った者、物的技術的条件の利用に便宜を提供した者またはその他の補助的作業をした者は発明者、創造者ではない(特許法実施細則13条 2010年2月1日施行)。
契約法では、特許出願権は共同開発者の共有とされるが(契約法340条)、共同開発契約の当事者の義務として、約定に基づいた投資を行なわなければならず、これには技術をもって投資すること、研究開発作業に分業して参加すること、研究開発作業に協力共同することを含む(335条)と規定され、研究開発業務の分担参与には当事者が約定した計画と分担に従い、共同又は別個に設計、製造方法、試験、試作等の業務を担当することを含む(最高人民法院の技術契約紛争案件の審理に法律を適用する若干問題に関する解釈19条)。
3 特許権の共有
(1)日本の共有特許
共有権利の持分譲渡や第三者への実施許諾には他の共有権利者の同意を必要とする。同意なしには、専用実施権はもちろん通常実施権も設定できない。
その発明の実施については、契約で別段の定めをした場合を除き他の共有権利者の同意を必要としない(特許法73条)。
特許侵害に対しては共有者単独で訴訟提起ができる。
特許受ける権利が共有の場合、他の共有者と共同でなければ出願できない(特許法第38条)。
日本ではすべての共有者と共同で出願しなければならない。ただし発明者ではなく特許を受ける権利の譲渡を受けた企業などが出願できる。
(2)中国の共有特許
(ア) 特許法による規律(第8条)
@複数の単位または個人が協力して完成した発明、Aある単位又は個人が他の単位または個人から委託を受けて完成した発明については、別途の合意がある場合を除き、特許出願権は発明を完成または共同完成した単位又は個人に属する。
特許法では特許が共有になる場合として共同で完成した発明の場合をあげ、委託を受けて完成した発明は別段の合意がある場合を除き発明を完成した受託者に特許出願権が属すると規定している。
(イ) 共有特許の出願
中国では特許を受ける権利の共有者全員が署名捺印しなければ特許出願できない。
中国人と外国人とが共同で出願する場合は中国人と外国人のそれぞれにつき出願人としての形式審査を行う。
(ウ) 共有特許の譲渡
出願中の特許を受ける権利および特許権について、中国人と外国人の共有にある場合で、外国人への譲渡の場合には、中国人が譲渡する場合と同じ扱いとなる(特許審査基準第1部分第1章6.7.2.2)。すなわち技術輸出許可証明あるいは技術自由輸出契約登記証明書を提出しなければならない。
出願後登録前の場合はすでに知識産権局に出願人として登録されており、共有者すべての同意なく出願人の変更登録ができない。
出願前の特許を受ける権利については、共有に関する民法通則の規定に従う。同法78条の共有の一般原則によると、各共有者は自己の持分の譲渡を要求することができる。ただし他の共有者は同等の条件で譲受ける権利(優先的譲受権)を有する。(国家科学技術委員会発、対外科学技術合作交流中知的財産権を保護する指導原則の伝達に関する通知)。
(エ)権利行使
これまで特許法には共有特許の権利行使に関する規定がなかったが改正特許法は以下の通り規定した。
第15条
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特許出願権又は特許権の共有者の間で権利の行使について約定がある場合はその約定に従う。約定がない場合、共有者は単独で実施するか、あるいは一般許諾方式によって他者に当該特許の実施を許諾することができる。他者に当該特許の実施を許諾する場合、徴収する使用料は共有者同士で分配する。
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前款が規定する状況を除き、共有する特許出願権又は特許権については共有者全体の同意を得なければならない。
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4 実施権
(1)日本では特許法上、規定があるのは通常実施権と専用実施権についてである。
通常実施権(99条)
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設定登録可能
登録の効果は対抗要件
許諾者は自己実施ができる。
許諾者の承諾あれば再実施可能
実施権者だけによる侵害行為の排除も損害賠償もできない。
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専用実施権(98条)
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設定登録可能
登録が効力発生要件
許諾者の自己実施は不可
再実施許諾には許諾者の承諾必要
自ら侵害行為の排除も損害賠償請求もできる
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特許法の規定ではないが、通常実施権の中に独占的通常実施権(契約の相手方にのみ実施権を与える旨を明記、自己は実施できる)があり、さらに完全独占的通常実施権(相手方にのみ実施権を与え、かつ許諾者の実施権もない)もある。
独占的通常実施権
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侵害行為への差止め請求を認めた判例あり。特許権者の有する差止め請求権の代位行使を認めた判例あり。損害賠償請求権を認めた判例もあり。
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(2)中国特許法上の実施
実施許諾
特許実施許諾契約の種類
(ア)独占的実施許諾
(独占許可)
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実施権者(ライセンシー)が実施権を独占するため、許諾者(ライセンサー)は自ら実施できないし、第三者に別途実施許諾もできない。実例としては少ない。
実施権者みずから侵害行為の排除をできる。
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(イ)排他的実施許諾
(独家許可、排他許可)
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特許権者(許諾者)は自ら実施できるが排他的実施権者以外の者に実施許諾できない。
特許権者が行わないときには、自ら侵害行為を差止めできる。
「独占的通常実施権」と呼ばれるものに相当するが、これは日本国特許法上の用語でなく、その結果「独占的通常実施権」としての特許庁への登録もない。中国の排他的実施許諾は登録する。
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(ウ)通常実施許諾契約(普通許可)
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許諾者は自己実施も、第三者へ重複して許諾することもできる。
他人の特許侵害行為を排除できるかは明確ではない。損害賠償請求権はない。
契約で実施権の種類を特定していない場合には普通実施許諾と認定される。
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実施料の制限
契約法、技術輸出入管理条例上はロイヤリティの上限を定める規定はない。しかし契約の登録時に審査がなされており、また親子会社間では不当に高額のロイヤリティは中国子会社に利益を留保させない課税回避策(中国課税権の侵害)という見方がなされ、指導が行われることがある。
第三次改正以前は、特許法には共有特許の行使に関する実施行為につき規定がなかったが、改正により共有特許の行使については契約優先の原理にしたがうものとし、合意がなければ、各共有者は自由に実施できる。権利行使については契約で定めるが定めがない場合には、相手方の同意を得て権利行使する。
特許法第15条
「特許出願権又は特許権の共有者の間で権利の行使について約定がある場合はその約定に従う。約定がない場合、共有者は単独で実施するか、あるいは一般許諾方式によって他者に当該特許の実施を許諾することができる。他者に当該特許の実施を許諾する場合、徴収する使用料は共有者同士で分配する。
前款が規定する状況を除き、共有する特許出願権又は特許権については共有者全体の同
意を得なければならない。」
5 職務発明
中国特許法第6条では次のように規定している。
ア 所属単位の任務の執行、または
イ 主として所属単位の物質的条件のみを利用して完成された発明
は職務発明となり所属単位が特許出願権を有する。
上記イにつき契約により、特許出願権の帰属について定めることができる。
非職務発明は発明者に特許出願権がある。
「所属単位の任務の執行」とは次の3つを含む(実施細則12条)。
(ア)本来の職務中に完成した発明
(イ)所属単位から与えられた本来の職務以外の任務を遂行中に完成した発明
(ウ)辞職、退職又は配転後1年以内に完成した発明で、元の単位で担当していた本来の職務又は元の所属単位から与えられた任務と関係のあるもの
物的技術的条件
特許法第6条に言う所属単位には、一時的な勤め先を含む。
特許法第6条に言う所属単位の物質的技術条件とは、所属単位の資金、設備、部品、原材料、又は一般的に開示されていない技術資料などを指す。(特許法実施細則12条)。
技術成果の完成後に物的技術的条件を利用して技術案(発明)について検証を行う場合は含まない(技術契約司法解釈4条)。
転職と職務発明の帰属
組織Aから組織Bへ転職した個人が、完成した技術成果が組織Aの作業任務に属し、主として組織Bの物的技術的条件を利用した場合、組織ABの協議により権益の帰属を決め、協議不能の場合は完成した技術的成果への貢献の大きさに従い、合理的に分配し享有する(最高人民法院の司法解釈[2004]20号)。
共同で完成した発明
従業員が職務または組織に与えられた任務外で、兼職でまたは他人との協力で完成した技術成果の権益は、当該従業員と兼職の勤務先機関または当該協力者との合意により決定する。合意がないか補充協議ができない場合、契約法326条、327条の規定による。この規定の適用にあたり所属組織、その他の組織の技術的権益を害してはならない(司法解釈6条)。
職務発明の報奨金
特許権付与を受けた単位はそれに対して発明者に報酬を与え、実施後はその応用の範囲および取得した経済的利益に基づき合理的な報酬を与えなければならない(特許法16条)。
この規定は改正されていないが、改正後の特許法実施細則は「第6章 職務発明創造の発明者または考案者に対する奨励と報酬」において次の通り規定している。国有企業か否かによる差はない。
第76 条 特許権が付与された単位は特許法第16条に規定する奨励、報酬の方式と金額について発明者又は考案者と約定するか、若しくは法に従って制定した規定制度の中で定めることができる。
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企業、事業団体が発明者又は考案者に与える奨励、報酬は国の相関財務、会計制度の規定に基づいて処理する。
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第77 条 特許権が付与された機関は、発明者又は考案者と特許法第16条に規定する奨励、報酬の方式と金額について約定していない、しかも法に従って制定した規定制度の中で定めていない場合、特許権公告日より3ヵ月以内に発明者又は考案者に報奨を支給しなければならない。発明特許一件あたりの報奨は3,000 元を下回ってはならず、実用 新案特許又は意匠特許一件あたりの報奨は1,000 元を下回ってはならない。
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発明者または考案者の意見が所属単位に採用されたことにより完成された発明創造については、特許権が付与された単位は、優遇して報奨を支給しなければならない。
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第78 条 特許権が付与された単位は、特許法第16条に規定する奨励、報酬の方式と金額について発明者又は考案者と約定していない、しかも法に従って制定した規定制度の中で定めていない場合、特許権の有効期限内において、発明創造の特許が実施された後、毎年、同発明または実用新案特許の実施により得られた営業利益の中から2%を下回らない金額、若しくは、当該意匠特許の実施により得られた営業利益の中から0.2%を下回らない金額を、報酬として発明者または考案者に与え、或いは、上述の比率を参照して、一括で発明者または考案者に報酬を与えなければならない。
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特許権が付与された機関が、その他の機関または個人にその特許の実施を許諾した場合、取得した使用許諾料の10%を下回らない金額を報酬として発明者または考案者に与えなければならない。
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第8 営業秘密
営業秘密の保護(不正競争防止法等)
営業秘密の3要件
ノウハウの定義については反不正当競争法が参考になる。同法10条3項は、技術上の情報を営業秘密として保護する規定を置いているが、そこでの「営業秘密」と認められるための3要件は次のとおりである。
一般に知られておらず(非公知)
権利者に経済的利益をもたらし、実用性を備え
権利者によって秘密保護の措置を施された技術情報
特に秘密保護措置がなされていないことで営業秘密性が認められない、すなわちノウハウとして保護されないことに注意すべきである。
ノウハウを技術移転する場合にはまず守秘義務契約を締結することが大切である。移転するノウハウを特定し、当該ノウハウで達成できる技術目標を契約上明確にすることが必要である。
なおノウハウ譲渡契約の場合、契約法によれば、ノウハウ譲渡人は、約定に従って技術資料を提供し、技術指導を行い技術の実用性および信頼性を保証し秘密保持義務を負担しなければならない(347条)。またノウハウ譲渡人は、自己が提供する技術の合法的な保有者であることを保証するとともに、提供する技術が完全で誤りがなく有効であり約定の目標を達成できることを保証しなければならない(349条)。
技術輸出入管理条例は技術秘密(ノウハウ)の中国への輸入についても管理対象として規定しており、技術の性格に応じて輸入禁止、輸入制限、輸入自由の三種類の技術に分かれた取扱いとなる。日本から中国への技術輸出(中国から見れば輸入)は技術譲渡であり、技術譲渡に伴う譲渡人の責任を規定しており注意が必要である。
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