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中国ニュース

2 知的財産問題


  • 大学での知的財産の管理と活用

大学では学内規定で、大学保有の特許を実施許諾して得たリヤルティー収入の分配等について定めている。また基金を設けている。
 (上海交通大学の例)
  特許権と特許出願した技術を発明者が自らが、当該技術を市場に出し、他人に実施させ、もしくは他人に譲渡して生産に効果があった場合には、上海交通大学技術移転センターは仲介事務を行い、税引き後利益を以下のとおり分配する(上海交通大学の知的財産権の成果の奨励および審査に関する弁法(2003年))。

  特許権あるいは特許出願の技術発明者に50% 大学に50%

  上海交通大学技術移転センターが市場に出し、かつ仲介事務を行い他人に実施させ、もしくは他人に譲渡して生産に効果があった場合には、特許権あるいは特許出願の技術発明者に40% 大学に40% 上海交通大学技術移転センターに 20%
  ここでは技術移転センターが大学とは独立した財政基盤の上に立っている。

  上海交通大学に特許権および特許出願権の技術転化基金を設立し、特許権および特許出願権の技術転化により獲得した利益を基金にあてる。技術の譲受人が特許権・特許出願権の技術契約を履行する過程で存在するリスクがあり、基金を用いて解決する必要がある場合には紛争発生時に用いることとし、調停、仲裁、訴訟等に関連して弁護士費用、違約賠償金などの支払いに充てる。
 基金は上海交通大学科学技術処・高新により責任をもって管理され基金の使用は校長の審査による(上記弁法)。

 (?旦大学の例)
 大学に特許基金が設置され、その基金は大学からの借入れと基金からの援助を受けた特許技術が実施され利益を得たのちの戻り金を財源とする。この基金は大学教職員の職務発明の特許出願費用、維持費、代理費用の50%、授権後の登録費と3年分の年費などにあてる。
この基金の援助で得られた特許権の実施により利益を獲得した場合には、関連契約を大学知的財産権弁公室に届出し、そのプロジェクトで得た収益中5%を大学特許基金に返還しなければならない(?旦大学特許基金管理弁法(1999年))。

(浙江大学の例)
浙江大学特許管理実施細則
特許権、特許出願権の譲渡および、譲渡費は双方の合意あるいは専門機構の評価により確定し、または技術市場交易所の上場取引で確定するが、大学が投入した当該プロジェクトに要した金額(科学研究経費、場所、設備、人員給与などを含む)を下回ってはならない。譲渡収入は大学、学院(研究所)、担当チームで2:2:6の割合で分配する(17条)。
特許技術の譲渡と産業化の促進のために、特許技術譲渡(最初の譲渡は含まない)のうち授権の日より5年内の譲渡費は、発明者が浙江大学の学生の場合には大学が譲渡費からプロジェクトごとに1元を取得し、発明者が教職員の場合には大学はプロジェクトごとに総収益の10%を譲渡費として取得するが最高額は1万元とし、5年経過後の譲渡収益は前記の2:2:6の割合で分配する(18条)。
特許権の独占的実施許諾(許諾者も実施できない)、排他的実施許諾(許諾者は実施できる)のロイヤルティーは双方の合意あるいは専門機構の評価によるが、大学が投入した金額を下回ってはならない。通常実施許諾は技術開発プロジェクトごとに処理する。上記の経費収入は、横断的な組織経費管理に算入する(19条)。
特許侵害紛争は大学の科学研究管理部門が責任を持って処理し、発明者および所属機関は積極的に協力し必要ならば訴訟に参加して訴訟活動をおこなわなければならない(20条)。
浙江大学基金管理弁法
援助範囲  発明特許出願受理通知書により、大学は1件2000元を援助し、特許授権後、大学はさらに1000元、以後3年間の年費。
 特許代理機構に代理を頼まず自ら出願した場合には出願時1件あたり1000元、特許授権後は2000元と3年間の年費。4年目以降の特許年費は担当チームの科学研究経費より支払う。3年以内に第三者に実施許諾した場合には年費の支払いは原則としてライセンシーがおこなうか、約定に従う。
基金の財源と管理
 大学が特許基金を設立し、基金額は200万元とする。大学科研管理部門成果と知識産権管理弁公室が管理し計画財務処が使用を監督する。

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