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中国ニュース

2 知的財産問題


  • 中国での共有特許

特許法による規律(第8条)
@複数の単位または個人が協力して完成した発明、A ある単位又は個人が他の単位または個人から委託を受けて完成した発明は、別途の合意がある場合を除き、特許出願権は発明を完成または共同完成した単位又は個人に属する。

特許法では特許が共有になる場合として共同で完成した発明の場合をあげ、委託を受けて完成した発明は別段の合意がある場合を除き発明を完成した受託者に特許出願権が属すると規定している。

共有の場合の特許出願権と特許権の譲渡については、共有者の持分譲渡は、他の共有者に事前に通知し、他の共有者は同等の条件であれば優先的に譲受ける権利を有する(国家科学技術委員会発、対外科学技術合作交流中知的財産権を保護する指導原則の伝達に関する通知)。
共有者の持分の分割および譲渡の自由は民法通則法で認められている(78条)。
特許権に質権を設定する場合、質権設定者は共有特許権者全員でなければならない(特許権質権設定契約登録管理暫定弁法4条)。第三次改正草案第12条に関するA1条も共有者全体の承認を必要と規定している。
 特許権の放棄については共有者全員が署名捺印した書面を知識産権局特許局に提出しなければならない。
 共有持分権の放棄も可能であり、その場合、他方共有権者は、単独でも出願できる(契約法340条)。ただし放棄した当事者も含め、日本の共有特許 共有権利の持分譲渡や第三者への実施許諾には他の共有権利者の同意を必要とする。同意なしには、専用実施権はもちろん通常実施権も設定できない。
その発明の実施については、契約で別段の定めをした場合を除き他の共有権利者の同意を必要としない(特許法73条)。
特許侵害に対しては共有者単独で訴訟提起ができる。

米国の共有特許
 各共有者は特約のない限り、他の共有者の同意なく、また報告する義務もなく、自由に自己実施、譲渡、ライセンスができる。
 一部のクレームについてのみに共同発明者であっても特許全体を保有するとの推定を受け反証がない限り全クレームにつき、自己実施ができ、明示の特約ない限り全クレームについて第三者に通常実施許諾ができる。特許権者自身の実施が制限されるライセンスを第三者に許諾するのは共有者全員の合意がなければならない。
  共有特許権の侵害訴訟においては他の共有者と共同して提訴しなければならない。
 なお米国では共有特許に重要な特許は少なく、その質は一般に高くないと見られる。

 中国契約法による規律
契約法では技術開発契約(これには共同開発契約と委託開発契約がある)の中で、特許の共有に関して特許法より詳しい規定を置いている。技術開発契約を締結した結果、生まれた発明に関しては特許法による規律プラス契約法による規律を受ける。

技術開発契約において、特許を受ける権利の帰属は当事者の合意により決まるが、事前の合意がない場合、補充的な協議を重ねても合意に達しない場合、契約法は次のとおり帰属を決めている。
 (委託開発契約の場合)(339条)
特許を受ける権利は受託者=研究開発者に帰属 (特許法8条と同じ)
 受託者に帰属することのバランスから委託者は特許成立後の無償の実施権を有し、託者が特許出願権を譲渡する場合には優先的譲受権を持つ。

 (共同開発契約の場合)(340条)
特許を受ける権利は共有(特許法8条と同じ)

共有者が特許出願権を第三者に譲渡する場合には他の共有者は優先的譲受権を持つ。
共有者のひとりが持分である特許出願権を放棄すれば他の当事者(達)の単独(共同)出願とできる。
特許成立後は放棄した当事者は、無償の実施権を持つ。

出願は共有者の全員の同意で行う。

 中国の共有特許の第三者への実施許諾
特許法上は明文の規定がないが、全員が実施許諾者とならなければならない(特許実施許諾契約届出管理規則)。
技術開発契約により生まれた共有の発明についての規律が司法解釈にある。
 自己実施能力がない共有権者は第三者に実施許諾、または第三者と共同実施、投資形式で特許を実施ができ、これらは自己実施とみなされ、他の共有権者の同意は不要である。

 中国の共有特許権の共有者の自己実施
 他の共有者の同意なく可能である(民法通則78条)。
 中国の共有特許権の持分放棄
特許法上は明文規定がないが、審査指南で持分放棄を認められている。
特許権全体を放棄するには、「特許権者が書面で放棄を声明すること」が必要であるが(特許法44条)、共有の場合には共有者全員の署名が必要で、かつ請求項ごとに放棄することができない(審査指南)。日本では請求項別に放棄可能であるが、持分放棄の結果、他の共有権者が持分権を承継すると考えられる。

 中国の共有特許への担保権設定
共有権者全員の同意がないと担保に入れられない。
 中国の共有特許と訴訟
共有権者が単独では侵害訴訟など提起できない。

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