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中国ニュース

2 知的財産問題


  • 馳名商標制度

馳名商標について
中国では著名な商標を特に保護する制度があり、「著名商標」として解説されている本も多い。ここでは中国語に即して馳名商標と呼ぶことにして、説明する。
(1)馳名商標の意義
同一でない又は類似しない商品について出願した商標が、中国で登録した他人の馳名商標を複製、模倣又は翻訳したもので、かつ公衆が誤認し、当該馳名商標の登録者の利益に損害を与えるおそれのある場合は、これを登録せず、かつその使用を禁止する(商標法第13条2項)。
馳名商標とは中国において関係する公衆に熟知され、かつ比較的高い名声を有する商標をいう(馳名商標の認定および保護に関する規定第2条1項)。
(2)馳名商標の認定要素
馳名商標の認定にあたっては、下記に掲げる要因を考慮しなければならない(商標法第14条)。
@ 当該商標に対する関連する公衆の認知度
A 当該商標使用の継続期間
B 当該商標のあらゆる宣伝業務の継続期間、程度および地理的範囲
C 当該商標が馳名商標として保護を受けてきた記録
D 当該商標が馳名であることのその他の要因
商標局、商標評審委員会は、馳名商標を認定する際、商標法第14条に規定する各要件を総合的に考慮しなければならないが、当該商標は必ず条項の規定のすべての要件を満たすことを前提としてはならない(馳名商標認定保護規定第10条)。
  以下の資料は、商標が馳名であることを証明する証拠資料とすることができる(馳名商標認定保護規定第3条)。
@ 関連する公衆の当該商標に対する知名度を証明する関係資料
A 当該商標の使用継続期間を証明する関係資料、これには、当該商標の使用、登録の歴史および範囲の関係資料が含まれる。
B 当該商標のあらゆる宣伝作業の継続期間、程度および地域的範囲を証明する関係資料、これには広告宣伝および販売促進活動の方法、地域的範囲、宣伝媒体の種類および広告投入量などの関係資料が含まれる。
C 当該商標が馳名商標として保護を受けた記録を証明する関係資料、これには当該商標が過去、中国又はその他の国および地域において馳名商標として保護を受けた関係資料が含まれる。
D 当該商標が馳名であることを証明するその他の証拠資料、これには、当該商標を使用する主要商品の過去3年間の生産量、販売量、販売収入、収益税、販売区域などの関係資料が含まれる。
(3)5年の期間制限
すでに登録された商標が本法第13条、15条、16条、31条の規定に違反し、その商標登録日から起算して5年以内であれば、商標権者又は利害関係人は商標評審委員会に当該登録商標の取消裁定を請求することができる。悪意の登録については、馳名商標を有する者は5年の期限の制限を受けない(商標法第41条2項)。
(4)馳名商標の証明と既登録商標の取消裁定請求 
他人がすでに登録した商標が商標法第13条の規定に違反すると認めた者は、その者の有する商標が馳名であることを証明する関連資料を提出して、商標評審委員会に対して当該登録商標の取消裁定を請求することができる(馳名商標認定保護規定第4条2項)。
商標評審委員会は、商標法第32条、第33条、第41条、第49条の規定により提出された商標審判請求を受理する。商標評審委員会は事実に基づき、法によりその審判を行う(商標法実施条例第28条)。
(5)馳名商標保護請求についての審査
工商行政管理部門は、商標管理の作業において馳名商標の保護請求を受理した後、案件が商標法第13条に規定する以下の状況に該当するか否かノついて審査を行わなければならない(馳名商標認定保護規定第6条1項)。
@ 他人が同一又は類似の商品に、当事者が中国で登録していない馳名商標と同一又は類似の商標を無断で使用し、容易に混同をもたらす場合。
A 他人が異なる又は類似していない商品に、当事者がすでに中国で登録している馳名商標と同一又は類似の商標を無断で使用し、容易に公衆の混同を招き、それにより馳名商標の商標権者の利益が損害を受けるおそれがある場合。
(6)商標評審委員会の裁定に対する不服
  当事者が商標評審委員会の裁定に対して不服がある場合、その通知を受取った日から30日以内に人民法院に訴訟を提起することができる。人民法院は商標裁定手続きでの相手方当事者に対し、第三者として訴訟に参加するよう通知しなければならない(商標法第43条2項)。

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