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  • 労働契約法実施条例

2008年9月18日、労働契約法実施条例(国務院令第535号)が公布され、即日施行された。

中華人民共和国労働契約法実施条例
第1章 総則
第1条 「中華人民共和国労働契約法」(以下、労働契約法という)を徹底的に実施するために、本条例を制定する。
第2条 各級人民政府及び県級以上の人民政府の労働行政等関係部門及び労働組合等の組織は、労働契約法の徹底的な実施を推進する措置をとり、労働関係の調和を促進しなければならない。
第3条 法律に基づき設立された会計士事務所、弁護士事務所等のパートナー組織及び基金会は、労働契約法で規定する使用者に属する。
第2章 労働契約の締結
第4条 労働契約法が規定する使用者が設立する分支機構が、法律に基づき営業許可証または登記証書を取得している場合、使用者となり、労働者と労働契約を締結できる。法律に基づき営業許可証または登記証書を取得していない場合、使用者から委託を受けたものが、労働者と労働契約を締結できる。
第5条 雇入れの日から1ヶ月以内に、使用者の書面による通知を経た後、労働者が使用者と書面の労働契約を締結していない場合には、使用者は書面にて労働者に労働関係の終了を通知しなければならず、労働者に経済補償金を支払う必要がない。但し、法律に基づき労働者に対して実際の勤務時間分の労働報酬を支払わなければならない。
第6条 使用者が、雇入れの日から1ヶ月を超え、1年未満の間に労働者と書面の労働契約を締結していない場合には、労働契約法第82条の規定に基づき労働者に毎月倍額の賃金を支払わなければならず、且つ、労働者と書面の労働契約を補充して締結しなければならない。労働者が使用者と書面の労働契約の補充締結を行わない場合には、使用者は労働者に労働関係の終了を書面で通知し、且つ、労働契約法第47条の規定に基づき労働者に経済補償金を支払わなければならない。
前項で規定する使用者が労働者に毎月支払う倍額の賃金の起算時間は雇入れ日から満1ヶ月の翌日までで、終了期限は書面の労働契約を補充締結した日の前日までとする。
第7条 使用者は雇入れ日から満1年、労働者と書面の労働契約を締結していない場合には、雇入れ日から満1ヶ月の翌日より満1年の前日までは労働契約法第82条の規定に基づき労働者に毎月倍額の賃金を支払わなければならず、かつ、雇入れ日から満1年の当日にすでに労働者と期間の定めのない労働契約を締結しているものと見なし、労働者と直ちに書面の労働契約を補充締結しなければならない。
第8条 労働契約法第7条に規定する従業員名簿には、労働者の氏名、性別、公民身分証明書番号、戸籍住所及び現住所、連絡方法、雇用形式、雇用開始時期、労働契約期限等の内容を含んでいなければならない。
第9条 労働契約法第14条第2項に規定する連続勤務満10年間の起算の期間には、使用者の雇入れ日から計算し、労働契約法実施前の勤務期間を含まなければならない。
第10条 労働者本人の原因に因らない原因で、元の使用者の下から新使用者へ勤務変更させられた場合には、労働者は元の使用者での勤務年数を合算して新使用者にける勤務年数とする。元の使用者が既に労働者に経済補償金を支払っている場合には、新使用者が法律に基づき労働契約を解除しまたは終了させ経済補償金の勤務年数を計算する際に、労働者の元の使用者での勤務年数は計算しない。
第11条 労働者と使用者が協議により合致した場合を除き、労働者は、労働契約法第14条第2項の規定に基づき、期間の定めのない労働契約の締結を要求する場合、使用者は労働者と期間の定めのない労働契約を締結しなければならない。労働契約の内容について、双方は合法、公平、平等自主、協議一致、誠実信用の原則に従って協議し、確定しなければならない;協議のうえ合致しなかった内容については、労働契約法第18条の規定に基づき執行する。
第12条 地方各級人民政府及び県級以上地方人民政府の関係部門が就職困難者に対して提供した就労補助金や社会保険補助金を支給する公益的性格を有する就労場所については、その労働契約には労働契約法の期間の定めのない労働契約の規定及び経済補償金の支払いに関する規定を適用しない。
第13条 使用者と労働者は労働契約法第44条で規定された労働契約終了事項以外の労働契約終了条件を約定してはならない。
第14条 労働契約の履行地と使用者の登録地が一致しない場合、労働者の最低賃金基準、労働保護、労働条件、職業災害防止及び当該地域の前年度従業員月平均賃金基準等に関する事項は、労働契約履行地の関連規定に基づいて執行することとする。使用者の登録地の関連基準が労働契約履行地の基準より高く、使用者と労働者が使用者の登録地の関連規定に基づき執行することを約定している場合には、その約定に従う。
第15条 労働者の試用期間の賃金は当該使用者の同等部署の最低ランク賃金の80%または労働契約に約定する賃金の80%を下回ってはならない。また使用者所在地の最低賃金基準を下回ってはならない。
第16条 労働契約法第22条第2項に規定する研修費用には、使用者が労働者に対して行った専門技術研修のために支払った証拠のある研修費用、研修期間の出張旅費及び研修のため発生した当該労働者のために使われたその他の直接費用を含む。
第17条 労働契約は満了したが、使用者と労働者が労働契約法第22条の規定に基づき約定した奉仕期間がまだ満了していない場合には、労働契約は勤務期間満了まで延長しなければならない;双方が別途に約定している場合には、その約定に従う。

第3章 労働契約の解除と終止
第18条 以下のいずれかの状況の場合には、労働契約法が規定する条件、手順に基づき、労働者は使用者との期間の定めのある労働契約、期間の定めのない労働契約または一定の業務任務の完成を期限とする労働契約を解除することができる。
(1) 労働者と使用者が協議一致する場合。
(2) 労働者が30日前に書面の形式で使用者に通知する場合。
(3) 労働者が試用期間内において3日前に使用者に通知する場合。
(4) 使用者が労働契約の約定通りの労働保護または労働条件を提供していない場合。
(5) 使用者が支払い時期に労働報酬を満額支払わない場合。
(6) 使用者が法律に基づき労働者の社会保険料を納付しない場合。
(7) 使用者の規則制度が法律,法規の規定に違反し、労働者の権益を侵害する場合。
(8) 使用者が詐欺的、脅迫的手段でまたは個人の困難に乗じて、労働者にその真意に反する状況下で、労働契約を締結させまたは変更させた場合。
(9) 使用者が労働契約において自らの法定責任を免除し、労働者の権利を排除した場合。
(10) 使用者が法律、行政法規の強制的規定に違反している場合。
(11)使用者が暴力、威嚇をもって、もしくは違法に人身の自由を制限する手段で労働者に対して労働強制する場合。
(12)使用者が規則に違反して危険作業を指揮し、強制し、労働者の身体の安全を脅かす場合。
(13)法律、行政法規の規定により労働者が労働契約を解除できるその他の状況の場合。
第19条 以下の状況のいずれかの場合、労働契約法が規定する条件、手順に基づき、使用者は労働者との期間の定めのある労働契約、期間の定めのない労働契約または一定の業務任務の完成を期限とする労働契約を解除することができる。
(1) 使用者と労働者が協議一致する場合。
(2) 労働者が試用期間中において採用条件に合致しないということが証明される場合。
(3) 労働者が使用者の規則制度に著しく違反する場合。
(4) 労働者が著しく職務怠慢をおこない、私腹を肥やす不正行為をし、使用者に重大な損害を与える場合。
(5) 労働者が同時に他の使用者と労働関係を結び、当該使用者の業務任務の完成に重大な影響を与え、または使用者が是正を求めたにもかかわらず是正しない場合。
(6) 労働者が詐欺、脅迫の手段でまたは個人の困難に乗じて、使用者に真意に反する状況下で労働契約を締結させまたは変更させた場合。
(7) 労働者が法律により刑事責任を追及される場合。
(8) 労働者が病気または労災に該当しない場合で、規定の医療期間満了後に元の仕事に従事できず、使用者が別途準備した仕事にも従事できない場合。
(9) 労働者が仕事にたえられず、研修を行い、または職場の調整を行ったにもかかわらず仕事にたえられない場合。
(10) 労働契約を締結した際の客観的な状況に重大な変化生じたために、労働契約が引き続き履行できず、使用者と労働者が協議したにもかかわらず労働契約内容の変更について合意できない場合。
(11)使用者が企業倒産法の規定に基づき企業再生を行う場合。
(12)使用者の生産経営に重大な困難が生じる場合。
(13)企業が生産転換、重大な技術革新または経営方式調整を行い、労働契約の変更を経たにもかかわらず、依然として人員削減を行わなければならない場合。
(14)その他の労働契約を締結した際の客観的な経済状況に重大な変化が生じたために、労働契約を引き続き履行できない場合。
第20条 使用者が労働契約法第40条の規定に基づき、労働者に定額以外の1ヶ月分の賃金を支払って、労働契約を解除する方法を選択した場合には、その定額以外に支払う賃金は当該労働者の前月賃金を基準にして確定しなければならない。
第21条 労働者が法定の定年に達した場合、労働契約は終了する。
第22条 一定の業務任務の完成を期限とする労働契約が任務完了により終了する場合、使用者は労働契約法第47条の規定に基づき労働者に経済補償金を支払わなければならない。
第23条 使用者が法律に基づき労災を受けた従業員との労働契約を終止する場合、労働契約法第47条の規定に基づき経済補償金を支払うほか、国家の労災保険に関する規定に基づき1回限りの労災医療補助金及び障害者就業補助金を支払わなければならない。
第24条 使用者が発行した労働契約解除または終了の証明書には、労働契約の期限、解除または労働契約終了日の日付け、勤務部署、当該使用者における勤続年数を明らかにしなければならない。
第25条 使用者が労働契約法の規定に違反し労働契約を解除または終了し、労働契約法第87条の規定に基づき賠償金を支払う場合、改めて経済補償金を支払う必要はない。賠償金の計算年限は雇入れ日から計算する。
第26条 使用者が労働者と服務期間を約定し、労働者が労働契約法第38条の規定に基づき労働契約を解除する場合には服務期間の約定違反とはならず、使用者は労働者に違約金を請求することができない。
以下のいずれかの状況の場合、使用者が労働者と服務期間を約定する労働契約を解除する場合には、労働者は労働契約に基づき使用者に対して違約金を支払わなければならない。
(1) 労働者が使用者の規則制度に著しく違反した場合。
(2) 労働者が著しく職務怠慢をおこない、私腹を肥やす不正行為をし、使用者に重大な損害を与えた場合。
(3) 労働者が同時に他の使用者と労働関係を結び、当該使用者の業務任務の完成に重大な影響を与え、または使用者が是正を求めたにもかかわらず是正しなかった場合。
(4) 労働者が詐欺的、脅迫的手段でもしくは個人の困難に乗じて、使用者に真意に反する状況の下で労働契約を締結させまたは変更させた場合。
(5) 労働者が法律により刑事責任を追及される場合。
第27条 労働契約法第47条に規定する経済補償金の月賃金は労働者が受けるべきである賃金に基づき計算しなければならず、時給または出来高給及び賞与、手当て、補助金等の金銭による収入を含む。労働者は労働契約の解除または終止前の12ヶ月間の平均賃金が当該地方の最低賃金の基準を下回る場合、当該地方の最低賃金基準によって計算する。労働者の勤務期間が12ヶ月未満の場合には、実際の勤務月数によって平均賃金を計算する。
第4章 労務派遣の特別規定
第28条 使用者またはその所属単位が出資または共同で設立した労務派遣単位が当該使用者またはその所属単位に労働者を派遣することは、労働契約法第67条に規定する設立の禁止される労務派遣単位に該当する。
第29条 派遣先事業主は労働契約法第62条に規定する義務を履行し、派遣労働者の合法的権益を維持・保護しなければならない。
第30条 労務派遣単位は非全日制の雇用形式で派遣労働者を募集してはならない。
第31条 労務派遣単位または派遣労働者が法律により労働契約を解除しまたは終了させる場合の経済補償金は、労働契約法第46条、第47条の規定に基づき執行する。
第32条 労務派遣単位が違法に派遣労働者との間の労働契約を解除しまたは終了させる場合は、労働契約法第48条の規定に基づき執行する。
第5章 法律責任
第33条 使用者が労働契約法の労働者名簿作成に関する規定に違反する場合、労働行政部門は期限内に責任を持って是正するよう命令する。期限を過ぎても是正していない場合には、労働行政部門により2,000元以上2万元以下の罰金を課される。
第34条 使用者が労働契約法の規定に基づき労働者に支払わなければならない毎月倍額の賃金または労働者に支払うべき賠償金が未払いの場合、労働行政部門は使用者に支払命令をしなければならない。
第35条 使用者が労働契約法及び本条例の労務派遣に関連する規定に違反する場合、労働行政部門及びその他関連主管部門は是正命令をおこなう。情況が深刻な場合は、派遣労働者一名につき1,000元以上5,000元以下の基準で罰金を課する。派遣労働者に損害を与えた場合には、労務派遣単位及び使用者は連帯して賠償責任を負わなければならない。
第6章 附則
第36条 労働契約法及び本条例に違反する行為に対する苦情、通報については、県級以上の地方人民政府労働行政部門は『労働保障監察条例』の規定に基づき処理する。
第37条 労働者と使用者の間で労働契約の締結、履行、変更、解除または終了に関して争議が生じた場合、『中華人民共和国労働争議調停仲裁法』の規定に基づき処理する。
第38条 本条例は公布日より施行する。


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