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中国ニュース |
1 労働契約法草案の審議で有力な論客の常凱中国人民大学教授はストライキ権についてどのように考えておられるのだろうか。
中国におけるストライキ権の法的根拠について常凱教授は次のように説明されている(「中国におけるストライキ権立法」(法政研究69巻3号)。
1982年憲法は、ストライキの自由を削除したため、ストライキは中国では違法であるという認識が中国で普及しているが、これは正確ではない、公民がストライキを行なうことを禁止する法律の規定はずっと存在していない。1980年代以降、労使の対立が激しくなり、サボタージュ、ストライキなどが多く発生しているが政府は慎重に対処してきた。もっとも法律上ストライキを提唱し保護しているわけでもない。
ストライキ権は国際条約の重要な内容である(EU国民基本権利憲章など)。ILOで採択された条約などにはストライキ権について具体的に規定するものが存在しないが、労働者の団結権に属するものと考えられている。
2 次にストライキが適法とされるための具体的な要件について常教授は、次のように説明されている。
ストライキは労働組合によって組織されなければならない。労働者と労働組合とは一体となっていなければならず、山猫ストのように労働組合によるのではなく、個々の労働者が自発的に起こしたものは適法ではない。したがって刑事民事の免責を受けられない。
またストライキは労働協約の締結を目的としていなければならない。適法なストライキは労働協約を締結できるような事項を目的としなければならない。さらにストライキは社会および経済秩序の安定と安全を保障しなければならない。したがって、職業により制限があったり、産業によって制限があるべきである。政治ストについては諸外国とも違法とされている。同情ストについては合法性につき議論が分かれている。ストライキに参加した者はノーワークノーペイの原則により賃金請求権を失う。
3 常教授は、現在、中国でストライキ権の立法をする場合の根拠は、2001年2月に全人代常務委員会で採択された「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」であるとする。その中に「同盟罷業をする権利、ただしこの権利は各国の法律に従って行使される」と規定されている。これが根拠となり、かならずしも憲法上の規定がなくとも立法は可能であるという。
さらに常教授は、この立法の前提条件として、関連する法律と制度が完備されていることが必要であり、労働協約制度、労働争議処理制度が完備され、労働組合が主体となることが明確でなければならないとする。そして労働組合が真に労働者の利益の代表でなければならないとする。2001年労働組合法はストライキ、サボタージュが発生したときに労働組合に労働者を代表して企業と協議することと規定した(第27条)。もちろんこれは過渡期の立法である。また教授は国家の立法の条件が成熟していなければ地方の立法を先行させることもできるとしている。
4 これらの常凱教授の学説は、日本や欧米から見れば常識的な意見であろうが、中国国内では異端に属し、一般的には「ストライキは違法」という意見が支配的である。
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