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中国ニュース

1労働問題


  • 労働契約法成立過程 その2

労働契約法の制定過程において、労働者保護派として論陣を張っている常凱教授であるが、常教授の考え方を知るために重要な論文がある。彼が九州大学の研究誌に発表した「中国におけるストライキ権立法」(法政研究69巻3号、平成15年2月発表)である(https://qir.kyushu-u.ac.jp/dspace/bitstream/2324/2301/4/KJ00000724420-00001.pdf)。
九州大学の野田教授のアドバイスの下で作成された同論文は、ストライキ権を保障する立法をするべきであるという内容であり、中国では異端に属する考え方と思われる。
 常教授の見解は、社会主義市場経済の下で労働市場も市場主義の考え方が基本になるのであれば、労働者の団体交渉権およびその交渉力の支えとなるべきストライキ権は必要であるという明快且つ論理的な主張である。そこでは中国の労働市場を欧米、日本などと全く同様にとらえている。中国では過去、憲法でストライキ権を人民の権利として規定していた時期があったが(1975年憲法と1978年憲法)、現行憲法(1982年憲法)には削除された。そしてストライキ権を規定した条項は労働組合法(工会法)、労働法はじめどの法律にも存在しなかったのである。常教授の論文はかなり進歩的であり、董教授を「使用者寄り」と見るように常教授を「労働者寄り」と見るのが誤解を生むのではないかと思う。プライベートでは仲がよいという両教授は、中国の未来を見据えた労使関係、おそらく欧州の社民主義的な福祉国家の元における労使関係を視野に入れているのではないかと思われる。

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