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  • 上海市発明創造の権利帰属と職務報酬の実施弁法

       上海市発明創造の権利帰属と職務報酬の実施弁法
第1条(制定目的と根拠)
自主創新を促進し、単位と発明者または設計人の合法的な権益を保障し、発明人または設計人の発明創造の積極性を激励するため、中華人民共和国特許法、中華人民共和国特許法実施細則にもとづき、上海市人民政府は「上海市中長期の科学と技術発展計画綱要(2006年2020年)の若干のセットとなる政策」およびその他関連法律法規の実施に関し、本市の実際状況を結合し、本法を制定する。
第2条(定義および適用範囲)
本弁法において「発明創造権」とは特許を受ける権利と特許権とを含む権利を指し、職務報酬とは職務発明の発明者と外観設計(意匠)の設計者に与えられるものをいう。本市内の発明創造権の帰属と職務報酬の支払などにつき本法が適用される。
第3条(発明創造の権利帰属)
単位の任務の執行により、または単位の物質的技術条件を主に利用して完成した発明は職務発明とみなされる。職務発明は単位に帰属する。
非職務発明は発明者または設計者に帰属する。
単位の物質的技術条件を利用して完成した発明は、単位と発明者、設計者との間で発明創造権の帰属に関する合意があればその合意に従う。
政府が資金援助した科学研究プロジェクトで形成された発明創造権は、他に合意または法律がある場合を除き、法規に異なる規定がある場合を除き、単位所有となることとし、発明者または設計者は法に基づき発明創造権の署名権と栄誉権を享有する。
第4条(発明創造権の帰属の契約合意)
単位の物質的技術条件を利用して完成した発明は、当該発明完成以前にまたは完成後に単位と発明者または設計者とで作成した書面による契約で、その権利を発明者もしくは設計者の所有と定めたり、あるいは発明者もしくは設計者の共有と定めたりできる。
発明創造権が発明者また設計者の所有と合意した場合または発明者もしくは設計者との共有と合意した場合には契約書面中に発明者または設計者は単位に対して補償を行なうか否か、その補償金額と方法を定めなければならない。
第5条(職務発明創造の権利の優先譲受)
発明者または設計者は職務発明の発明創造権を同等の条件の下で優先的に譲受けることができる。
単位は職務発明を譲渡もしくは無償で放棄するときには、当該発明創造の発明者または設計者に書面で優先権のあることを知らせなければならない。発明者または設計者が告知された後に明確な回答を与えなければならず、譲受を望む場合には単位に書面で通知しなければならない。双方が合意した期限を経過しても発明者または設計者が回答しない場合には単位は譲受を放棄したものとみなすことができる。
単位と発明者または設計者は職務発明創造権を譲受ける書面契約に署名する場合には同時に権利譲受から生ずる権利と義務についても合意しなければならない。
第6条(職務発明創造の報酬支払金額と方法)
特許権を与えられた単位は特許有効期間内に、その職務発明創造の実施、実施許諾、譲渡の後、発明者または設計者に対して単位と発明者もしくは設計者との書面契約形式の合意を通じて、以下の割合による報酬を支払わなければならない。
@
単位が自ら職務発明を実施している場合には、当該発明または実用新案の実施による税引後利益のうち5%より低くない額、また、意匠の実施による税引後利益の1%より低くない額を報酬として発明者または設計者に支払うこと
A
単位が職務発明を譲渡、第三者へ実施許諾した場合には当該職務発明の譲渡対価、ライセンスロイヤルティの税引後利益のうち30%より低くない額、ただし高等学校、大学、専門学校、科学研究所などの場合は50%より低くない額を報酬として発明者または設計者に支払うこと
    上記の規定を参照して単位と発明者または設計者とは契約合意の上、一回的な報酬支払とすることができ、もしくはその他双方が認める報酬支払方式とすることもできる。
株式会社の場合には株式で報酬を支払うことができる。
第7条(職務発明創造の自己実施の場合の報酬の参考要素)
 単位と発明者もしくは設計者とは本弁法第6条第1項@の規定にもとづき、単位が自ら職務発明を実施している場合の報酬額の決定の際に、職務発明の製品または製造方法の全体の税引後利益を基礎とし、以下の要素を参考として計算することができる。
@
職務発明の、全体の製品または製造方法中の技術貢献割合
A
契約または法律法規の規定において報酬を割り出す割合
B
発明者または設計者が発明に個人として貢献した割合

第8条(職務発明創造の譲渡、実施許諾の場合の報酬の参考要素)
 単位と発明者または設計者とは本弁法第6条第1項Aの規定に基づき、職務発明創造を単位へ譲渡し、他人に実施許諾する場合の報酬額の決定の際に、職務発明の発明プロジェクトの総譲渡対価またはライセンスロイヤルティの税引後利益を基礎とし、以下の要素を参考とすることができる。
@
職務発明の、全体の譲渡またはライセンスプロジェクト中の技術貢献割合
A
約または法律法規の規定において報酬を割り出す割合
B
発明者または設計者が発明に個人として貢献した割合

第9条(職務発明創造の無償または低価での譲渡、ライセンスの場合の報酬計算)
単位が発明創造権を無償もしくは低価で譲渡し、他人に実施許諾する場合には、当該発明の譲渡、ライセンスの市場価格の税引後利益を参照し、本法の規定に照らして発明者または設計者に対して報酬を支払うことができる。
その市場価格は単位と発明者、設計者との協議で決定するか、評価を委託して確定する。

第10条(権利侵害賠償費の報酬支払)
単位の特許権の侵害で紛争となり和解、訴訟、仲裁などで賠償金または補償金を得た場合には和解、訴訟、仲裁等の相当費用に充てた後の部分は職務発明を他人に実施許諾した場合の収益とみなさなければならない。
単位は本弁法の規定により発明者もしくは設計者に報酬を支払わなければならない。
第11条(職務発明創造の報酬の支払時期)
単位は契約上合意した時期に、職務発明創造の発明者または設計者に対して報酬を支払わなければならない。
単位と発明者または設計者との間で、報酬の支払時期について定めていない場合、もしくは契約上不明な場合には、発明者または設計者は下記の規定を参照して、単位に対して合理的な期間内に報酬を支払うよう要求できる。
@
自己実施の場合には毎年報酬を支払うこと。本年度の報酬を翌年度6月30日までに支払い完了すること
A
単位が職務発明創造を譲渡または他人に実施許諾した場合には譲渡対価またはライセンスロイヤルティが支払われた後3ヶ月以内に支払うこと
第12条(発明者又は設計者の関連情報に対する知る権利)
  単位は発明者又は設計者との職務発明報酬に関する契約に基づき、職務発明創造を自己実施したのち三ヶ月以内に、若しくは譲渡、ライセンスの契約を締結した後三十日以内に、関連情報を発明者又は設計者に通知しなければならない。
第13条(発明者又は設計者及び突出した貢献をした人員に与える奨励)
  特許権を与えられた国家企業事業単位は特許権の公告日から三ヶ月以内に発明者又は設計者に相応な奨金を与えるべきである。一項の発明特許の奨金は2000元より低くなく、一項の実用新案又は意匠の奨金は500元より低くてはならない。国家事業単位以外の単位はこれを参考として執行できる。
  特許権を与えられた単位は特許権の有効期間内に、その職務発明を実施、譲渡、ライセンスした後、発明創造の転化の為に巨大な貢献をした人員に奨励を与えるべきである。
  本弁法に基づき支払う奨金について、企業の場合は経費とすることができ、事業単位の場合は事業費に組み入れることができる。
第14条(発明創造権の帰属及び報酬に関する紛争の救済方法)
  発明創造の権利帰属契約又は職務発明報酬の契約においてその履行中に紛争が発生した場合、当事者が自ら協議することができ、職務発明単位の管理部門又は関連政府部門に請求して協調解決を求めることもできる。仲裁に付する協議があれば、仲裁を請求することもでき、仲裁に付する協議がなければ、法に基づき人民裁判所に訴えることもできる。
第15条(関連責任)
  単位が本弁法のある規定に違反し、発明者又は設計者及び発明創造の転化に突出した貢献をした人員の合法的権益を侵害し、且つ社会に重大な良くない影響をもたらす場合、関係政府部門は規定に基づき、当該単位の特許に関する補助金及び栄誉を取り消すことができ、当該単位の上級単位または主管部門は、国家と本市の関連規定により、その単位の主要な責任者に相応の処分を与える。
第16条(施行期日)
  本弁法は2007429日から施行する。


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