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中国ニュース

2 知的財産問題


  • 学位論文のデータベース化に対する著作権侵害訴訟

学位論文を発表した者(謝)が、無断で北京のある会社によって、その論文を電子化してデータベースに収録されたため、著作権を侵害されたとして提訴し、第1審は勝訴し、上級審である北京第二中級人民法院も一審を支持して、被告に損害賠償の支払いを命じた。

(当事者)

上告人(一審原告)謝暁慧

被上告人(一審被告)北京万方株式会社

(原告の請求内容)

MBR』に対し、著作権を有する原告は、被告により、許可なく『MBR』を自ら制作した「中国学位論文全文データペース」に収録されてしまい、そのデータを全国大学図書館などユーザーに販売されたため、原告の『MBR』に対する著作権、発表の権利、複製の権利、編集の権利、情報ネット伝達の権利などを侵害された。

被告に侵害の停止、権利侵害製品の処分、『法制日報』およびwww.wanfangdata.com.cnにおいて謝罪文を掲載し、経済損失3760元、慰藉料2000元、弁護士費用1000元、公証費用1000元の合計7760元の損害賠償を請求した。

(被告の抗弁)

 国務院学位委員会「博士修士学位論文の発送に関する通知」に基づき、中国科学技術情報研究所(中信所と略する)は法により定められた学位論文保存とサービスの機構である。被告は中信所の委託をうけ、学位論文データペースの開発維持を行っている。したがって、被告の利用行為も合法的である。他方、学位論文データペースのユーザーは国家図書館及び大学図書館など図書館ユーザーに限られ、社会一般は学位論文データペースのユーザーではない。図書館ユーザーにサービスを提供する目的は、科学研究の促進でありその使用範囲も限られる。ビジネス目的の販売は行ったことがない。したがって、被告が学位論文データペースに対する開発利用は、公益性があり、著作権侵害にならない。

第一審(原審)判旨:

1原告は『MBR』に対し著作権を有する。

2被告が抗弁において、中信所との委託協議をもって『MBR』に対する使用は合法であると主張したが、被告は、中信所が原告からの授権があること、原告が学位授与単位(修士卒業の大学)に論文の著作権を授権することを証明できていない。ゆえに、被告の上記抗弁を認めない。

また、被告が主張する合理的な使用について、それは著作権法に定められる合理使用には当たらないため、抗弁を認めない。

また、被告がビジネス販売は行われていないという抗弁も、データペースの宣伝資料において、そのビジネス性が明らかであるため、その抗弁も認めない。

 したがって、被告の行った、許可なく報酬も与えずに『MBR』をデータペースに収録し、ユーザーに提供した行為は、原告の著作権を侵害する行為にあたる。

 原告の侵害行為の停止、謝罪及び損害賠償の請求を支持する。

 なお損害賠償においては慰藉料を認めなかった。また原告の請求より低い額の2500元の経済損失および合理的支出を損害賠償として認めた。

これに対して原告が上訴した。上告理由は、権利侵害製品の処分を求めることと、損害賠償の額は低すぎるというものであった。

(第二審判旨)

1原告の著作権を認める

2被告の抗弁事実が証明されないため、認めない。

3損害賠償額についても、原審判決適当である。

したがって、原審判決を維持する。

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