日本の国際収支が二半期連続(ということは1年間)で赤字で3兆円を上回る額である。合衆国も貿易赤字額が前年度は増えている(米国はずっと赤字である)。
以前は合衆国の貿易赤字の主たる原因は日本からの輸入超過だったので、これを問題に取り上げる連邦議会の動向は直ちに「日本バッシング」として日本に伝えられてきた。近年は中国からの輸入超過であり、日本からも輸入超過なのだが中国の3分の1から4分の1程度の額なので、もっぱら「中国バッシング」となっている(それでも自動車やその部品の日本からの輸入超過は常に政治的争点とされる)。
クルーグマン教授によれば、過去の合衆国の貿易赤字(国際収支の赤字)は心配いらないし、神経質になる必要はない。それが合衆国経済に悪い影響を与えて失業率が上がるということはないという。
一方、教授は資本の流出入(資本のフロー)に着目することが大切で、米国の貯蓄の減少を外国からの資本の流入がカバーしてくれてきたことが大きい(合衆国経済を支え、ハイパーインフレを回避できている)、そうである。
日本経済にとって貿易赤字の額は今のところ大したことはないが、資本のフローについては、今から問題点として考えておいてよさそうだ。
シャープに台湾企業の鴻海が出資するという話が出ている。また東京スター銀行が台湾の銀行に買収されるようだ。このように日本の会社の株式が外国資本に売却されることに反発したり、警戒感を持つ向きもあるが、「ありがたい」と思うことも大切だ。土地など不動産の外国人所有を日本は特段規制していない。それで、対馬の土地が韓国資本に買い占められているとか、水資源を狙って大陸中国の資本が原野を買い占めているから防止策を取らなければならないという意見が一部にある。
国家安全保障の観点は重要だが、感情的に反発するのであれば、それは経済を見誤ることになる。
株にせよ、不動産にせよ、国内だけで売買しあう時代ではない。外国資本が買ってくれるから、流動性が増し、価値が向上し、全体として国富が増えるという発想が重要だ。なぜなら、いったん日本経済が冷え込んだ時に、これら国内の資産を切り売ることすらできず、不況の悪循環が起きてしまう。日本が不況の時に好景気であったり投資先を探している他国の資本や投資家が購入してくれなければならない。日本の株式市場は外国機関投資家の買いが相場上昇の重要な要素となっているが、日本経済にとって極めてありがたいことだ。
投資対象というだけでなく、たとえば日本の観光産業はもっともっとアジアの資本家に所有されてよい。地方自治体の観光課の職員が中国や東南アジアに行って、「旅行に来てください」と呼びこむのは非効率的だ。
世界経済の時々の動向によって資本の流出入が健全に起きることは、上述の米国の例でもわかるように安全弁であり、強みである。
韓国や中国、フィリピンなど土地の外国人所有を規制している諸国は「バブル防止」という意味もあるだろうが、日米のように外国資本による不動産投資の自由な国に比較して、流動性の制約によって、その資産価値を低くしてしまっているので、そうせざるをない状況自体が国のシステムの弱さと言ってもよいのだ。
▲雑記帳一覧へ戻る
Copyright(C)2014,Ochika Law Office. All Rights Reserved.
|