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 雑記帳

富裕層について



 フランスで富裕層のスイスやベルギーなどの国への国籍変更が報じられている。富裕層への所得税などの課税をふやすことに反発したセレブリティ(有名ブランドのオーナー会社社長など)が近隣の税率の低い富裕層に優しい(?)国へ移って行っているというものだ。さっそくフランス政府は、これではまずいと考えて税率アップを緩和する方針を打ち出したようだ。
 日本で自民党や経済界の主張として、「これ以上、高額の法人税率を維持していると企業の海外流出が起きる」という法人税減税論がずっと主張されているが、富裕層の海外脱出に対する懸念は声高には唱えられていない。
 それは、欧米各国に比べて日本の富裕層、特に企業経営者の年収というのはたかが知れているということもあるだろう。諸外国では、海外への企業の移転の動機として企業オーナーや企業経営者の課税回避という要素も語られているようだ。
 スポーツ選手や芸能人などの低税率国への脱出はずいぶん以前から報道されていたが「所詮、一般社会とはあまり関係ない」という目で見られてきたと思う。しかし、上記の例のように企業と経営者(またはオーナー)がワンセットで海外へ移転してしまうことが一般化すると経済や税収への影響は大きいと思われる。
 岩田規久男氏の「インフレとデフレ」を読んでいると、スウエーデンで近年、失業率が大幅にアップし(7.6%位。以前は2%台)、その原因は企業の海外流出であり、それが起きた原因の一つに高率の法人税と企業首脳陣個人への高額の所得税課税があったということである。
 これはスエーデンにとって深刻な事態で日本人にとって「社会福祉の充実した理想的な国」の基礎が崩壊しつつあるのではないだろうか。
 翻って日本の富裕層についてみると、生活環境の変化、日本国内の治安の良さ、医療の充実、外国で日本語が通用しない(富裕層も語学ができない)などの諸条件から、「海外移住のハードルが高い」ことは疑いない。
 しかし、安倍政権下で相続税の課税アップがおこなわれ、デフレ脱却(インフレ目標)政策がとられ、円安が誘導されという流れの中で、日本の富裕層の海外脱出がまず発生し、それに伴い海外への企業流出が起きるという事態もあながちありえないことではない。
 中国でも富裕層のシンガポール国籍取得が相次いでおり、企業の海外流出も始まっているようである。韓国では個人ベースでずいぶん以前から富裕層・高学歴層の米国・カナダ等への脱出が行われている。
 ぼくは少なくとも個人レベルでは、国籍離脱の自由は完全に保障されるべきであると考える。また企業についても、経済行動として合理的であれば許容せざるを得ない(防止策は実はあまりない)と思う。
 その先に見えてくる「国家とは何か。国民のアイデンティティはどのようなものか。」については予想がつかない。


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