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中国ニュース

2 知的財産問題


  • 設計図面と著作権および営業秘密保護

1 中国において日系企業が取引先から設計図面の提出を求められた場合の対応について考えてみましょう。当方は製品の納入のみを求められたつもりが、製品だけでなくその設計図面も渡すように要求されることは、相手の立場が強い場合には、ありうることです。法的には2通りのアプローチが考えられます。

2 ひとつは、著作権の主張で設計図の保護を図ることです。

中国著作権法第3条第17 は<工程設計図、製品設計図、地図、仕様図など図形作品、模型作品>を図形作品(図形の著作物)として保護しております。

 この規定に基づき、当の設計図の書面上に、「権利者の許可を得ずに、複製、公開、展覧、改竄などを禁止する」旨の文言を入れることにより著作権による保護ができます。

 これはいわゆる「著作権利声明」と呼ばれるものです。ただし、問題はその保護の効力と範囲です。著作権法は作品の「表現」を保護する法律で、作品の「思想」を保護するものではありませんから、設計図の中に含まれる設計者のアイデア、技術そのものを保護するわけではありません。

 また、設計図通り、生産ラインを設置することや当該設計図の示す製品を作ることは、図形著作物の複 製(いわゆる立体的複製)になるか否か、現行の法律上の規定は不明確です。

 ちなみに2001年著作権 法改定前には、このような行為は複製にはならないと明確に規定されていました。ところが、改正によりこの規定は削除されました。従って今後このような行為を複製と認める判例が出る可能性はあります。しかしこれまでのいくつかの裁判例ではこのような使用(設計図に基づく製造)は「複製」にあたらないと判示しています。従って、著作権による保護はこの意味で限界があります。

3 その次に考えられるのは、営業秘密の保護によるものです。中国では、不正競争防止法で営業秘密を保護している以外に、国家工商行政管理局は<商業秘密侵害の禁止に関する若干規定>を公布しております。図面所有者として、一番確実に保護できる方法は、中国の関連企業との間に、秘密保持契約を交わし、当該設計図を秘密として指定して相手に交付することです。これにより、相手に設計図の秘密保持義務を守らせることが法的に可能となります。仮に、いちいち秘密保持契約を締結 することが交渉の力関係の上で難しいとしても、一方的に、設計図の交付と同時に、秘密である旨の声明と守秘されたい旨の要望書を相手に交付することも法的に意義があります。これは後に秘密管理の証拠になります。相手の勝手な図面の漏洩は図面提供者の要求に違反することになります。

 従って第一には合意書面、それが力関係で無理なら一方的な(相手の署名はないが)秘密である旨の声明と守秘要求の記載を図面上にすることが大切です。

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