@ 中国進出日系企業の研究(党・工会機能と労使関係)
日本労働研究機構 資料シリーズ2003 no 130
A 海外日系企業の雇用管理と現地労働問題
日本労働研究機構 資料シリーズ2002 no 116
日本労働研究機構の調査資料である。@のヒアリング調査期間は2002年10月から11月である。調査企業は8例で蘇州、青島、南京、大連、重慶などの都市の日系製造業と政府機関・研究機関でのヒアリング報告、討論会の記録が収録されている。
第1部第1章では企業における工会と共産党委員会組織につき役割・機能が紹介されている。次に人材獲得競争の視点(第2章)人材流出の防止の視点(第3章)から説明がなされている。
第2部はヒアリングの記録であり、工会、党組織、行政、使用者の経営姿勢などにつきレポートが為されている。対象は日系合弁企業と国有企業の両方がある。興味深いのは大連市の3企業(日系2企業、国有1企業)である。マブチモーターが1994年に経験した労働争議の発生と収束の経緯が述べられている。重慶では国有企業1つと日系合弁(重慶長安汽車)が紹介されている。
ヒアリングした政府機関は、中国共産党大連市工業委員会、大連市総工会、大連市内の社区服務中心、大連経済技術開発区労働人事局、重慶市企業党建設研究会、重慶市総工会である。
討論会はひとつは、北京社会科学院社会学研究所の研究者、大学副院長の3名で2002年11月に行われたもので、工会の位置づけ、従業員代表大会への民主的参加の可能性、農民工問題、下崗問題につき報告と討論が行われている。もうひとつは清華大学、人民大学の教授などによるもので時期はやはり2002年11月ある。
冒頭Aの調査資料は欧米4カ国と中国、フィリピン、マレーシアについての労働法制、現地労働問題に関するものである。中国についての頁数が少ないので、@に比較すれば、物足りない。ただし1998年11月時点の大連経済技術開発区の3つの日系企業でのヒアリング結果が収録されており、労務管理の具体事例がわかる。
(文責 尾近正幸)
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